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「報われるポーカー」プロプレイヤー木原直哉 Part1

日本人として初めてWSOP優勝を果たしたプロポーカープレイヤーの木原直哉さん。ポーカー業界に大きな衝撃を残した木原さんがポーカーを始めたきっかけや、Mixゲームの魅力について語っていただきました!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

ポーカーを始めた当初


ポーカーを始めたのはいつですか?

大学休学中の2007年です。最初、囲碁やっていて、その後将棋をやって、大学入ってから麻雀とバックギャモンをやって、そのあとにポーカーに出会いました。

海外カジノで初めてポーカーしたのはいつですか?

次の年、2回目にカジノに行ったときでした。ちょっと長めに3週間行って、モンテカルロの後にカンヌにも行ったんですね。カンヌのカジノでもポーカーをやっていて。€5-€5でやってたので参加しました。初めての海外でのキャッシュゲームですね。

やってみて、感触はいかがでしたか?

1週間で、たったの7日間で€3000から€4000くらい勝ったんですよ。平均して1日100bbぐらい。しかも、夜中だけなんです。夜10時くらいにポーカーテーブルに人が集まり始めて、午前4時とかに終わります。 その時、€5-€5のレベルがあまりに低くてびっくりして、 これは食えるな って思ったんですね。それが、ポーカーにもっと時間かけようかなと思ったきっかけかもしれないです。 こんなに稼げるんだ って思いました。上振れもあったんだろうとは思うんですけど、それにしてもって感じで。

そのあとWSOPとかでも活躍されるようになったんですね。

2012年にWSOPの1つのトーナメントで優勝 して、そこからはしばらく大きい優勝とかあんまりなかったけど、 2022年にWSOPでは3つのトーナメントでFT に入れました。ディーラーズチョイスが2つとPPC。

PPCのFTって、基本ブレスレット持ってる人しかいないんですよ。だから、 ブレスレットよりも難しい って思われてます。そんなPPCのFTに入れたのはとても嬉しいですね。この年はポーカーの調子が良かったです。

出典:pokerstrategy

2023年のWSOP期間は、アキレス腱を切ってしまって、1ヶ月間日本にいなきゃいけなかったので残念ながらほとんど参加できなかったんですよね。2022年にFTに入った3つのトーナメント全部に間に合わなくて。メインの時期だけ行けたんですけど、5個しか出られませんでした。

株とポーカーについて


最近は株もされているそうですね。

最近はポーカーよりも 株の方が儲かる な、みたいな。お小遣い稼ぎ程度をちょい稼ぐくらいだったらポーカーの方が簡単ですけど、生活費を稼ぐレベルだったら、株の方が簡単です。

ちょっと難易度の感覚が違くて。やっぱりポーカーの方が市場が狭いので、稼げるほど勝つってかなり大変なんですよね。しかも勝ち続けなければいけない。でも、株の方は市場がバカでかいんで。食える程度に勝つハードルはさほど高くはないって感じですかね。

株の方が市場が大きい分、分散も大きくなってリスクが増えてしまうこともあるのでは?

分散という観点でも、ポーカーの方が大変だと思います。稼ぐためにはそれなりのレートを打たなきゃいけなくて、それなりのレートはみんなが強いんで、甘いプレイとかしてるわけにいかなくて、分散の高いプレイをしっかりやらなきゃいけない。

株の方が、食うだけだったら堅実なことやってても資金さえあればなんとかなるんで。資金が小さかったら、逆にバーンとその資金内で大きい勝負やったって別に構わないし、資金が大きくなったらやりづらくなってくるっていうのはポーカーも一緒ですね。

株の方がポーカーよりも稼ぎやすいなという感覚なんですね。

株は効率いいですね。ポーカーは怪しいですよ。 普通の職業で年収1000万、2000万、普通に行くじゃないですか。でも、ポーカーで年収2000万っていうのは相当大変です。ポーカーで2000万いくって、どれぐらいだろう。0.01%よりは少ないかなと思うんですよね。

例えば、上位1%、100人に1人ってレベルって1学年100万人いたら1万人じゃないですか。東大生3000人いて、 京大生もいて、医学部生もいてって、ざっくり考えていくと100万人いて1万人って、要するに東大のレベルくらいなんですね。 収入でいうところの上位1%って、日本だと年収1500万円です。上位1%ってそういう数字なんですよ。

年収でいう1500万が学力でいう東大レベル、分かりやすいです!

でも、ポーカーで1500万円平均的に勝つ人って、たぶん1%じゃなくて0.01%、そのさらに100分の1ぐらいだと思うんですね。でも、株は0.01%じゃなくて0.1%ぐらいで済むかなって感じ。食えるぐらいまで稼げるっていう意味では、株の方がハードルが圧倒的に低い。

例えば1億稼ぐってなった時に、ポーカーで1億稼ぐって絶望的で、世界でも数える程度しかいないけど、株の世界で1億なんてもうゴロゴロいるし、ビジネスの世界の1億もゴロゴロいるんで。 ゴロゴロって言ったって、0.00?%とかにはなるけど、それでもゴロゴロいるわけですよね。ポーカーは全く見ないぐらいの世界なんで。 全然難易度の感覚が違う 感じですね。

ポーカーを選んだ理由


他のゲームではなくポーカーをしてきたのはなぜですか?

自分、 なんでも好き なんですよ。囲碁も将棋も、バックギャモンも麻雀もポーカーも。好きだったらそればっかりやっていきたいけど、稼げなかったらそうはいかないじゃないですか。仕事をしなきゃいけない。でもポーカーは稼げるんで、ポーカーばっかりやっていくことができるじゃないですか。

麻雀は、今はMリーグができて、めちゃくちゃ報われる世界になってはいるじゃないですか。だからあの頃もし麻雀やり続けていたら、Mリーガーとかそういう未来があったかもしれないけど、でも当時の自分には食えない麻雀の世界にどっぷりいるっていうのはできなかったんで。だから、ポーカーをやってきた理由は、 1番報われるから って感じですかね。

囲碁将棋はですね、報われるんですけど自分には適性が全くなくて。全くないってことないかもしれないですけど。 競技人口が、たとえば将棋って700万人とかいて、プロって150人、女流を含めると200人。4万人に1人だから、将棋のプロになる人って、0.0025%とかそれぐらいなんですよね。 自分は将棋の適性的なものでは、多分上位1%ぐらいの適性があると思うんですよ。でも、1%の適性はプロとかで食える世界ではないんですね、将棋の世界って。

ポーカーをやってもらいたい人とは?


どんな人にポーカーを勧めたいですか?

例えば将棋とポーカー両方やったら「将棋の方が好きだ、やっぱり好きだな」って人は将棋をやった方がいいと思うんですよ。そういう人に対しても「いや、ポーカー面白いからおいでよ」って言うつもりはないんです。でも、 やったら断然ポーカーの方が好きなのにたまたまポーカーに出会ってなかったっていう人 が、ポーカーに出会わず終わるのはちょっともったいないですね。そういう人にポーカーを知ってもらいたいなって思いは結構強いです。

自分の思うポーカーの普及っていうのは、「みんながポーカーをやりましょう!」っていうよりは 「ポーカーもやってみて、合わなかったらすぐやめていいんじゃない?」 みたいな。 そうやって、自分にはポーカーがすごく向いてるって思った人がやってくれればいいかなって思いますね。

テキサスホールデムとMixゲーム


Mixゲームをやる理由を教えてください。

自分はどんなゲームでも好きだから、Mixゲームとかの方が向いてるんですよね。逆に1個のゲームを突き詰めるのは、結構ダメなんだと思っています。突き詰める系じゃないですね。

仮に世界のポーカー人口3億人だとしたら、トップ3に入るには1億分の1に入らなきゃいけない。トップ30なら1000万分の1、100万分の1でトップ300ですよね。点数で言うと、97、98、99、99.1、99.2、99.3…の勝負をするっていうのが、1個のゲームの世界ですね。 トッププロを目指すっていうんであれば、何千万分の1とかでないと。将棋の世界でも、A級棋士って10人しかいないわけで。

熾烈なトップ争いなんですね。

でも、自分はどんなゲームもほどほど、1万分の1みたいな。でも1個のゲームでトップ10に入るんじゃなくて、「いくつかのゲームでトップ1000を並べて、その総合得点だったらトップ10に入るよ」みたいなトップ10だってあっていいですよね。 100m走で、 9秒7、9秒68、9秒66、9秒58、っていう世界で、10秒3って戦えないじゃないですか。

でも、陸上10種だったら100m走、別に10秒3だったら100m走でかなりプラス。 こういう10秒3のようなやつを10個集めたら、金メダル取れるわけで。自分はそっちの方が向いてるし、自分自身が飽きなくて好きだし、必然的に気持ちも向いていくっていう感じです。

だからディーラーズチョイスとMixゲーム系になっていきますね。ディーラーズチョイスには20個のゲームがあるので。ゲームが多ければ多いほど得意です。99.1点、99.2点、99.3点で勝負するより、 全部90点で、その90点を91点、92点とかって底上げしていく 方が向いてますね。

Mixに向いていると思うプレイヤー


どんなプレイヤーに、テキサスホールデムではなくMixゲームを勧めたいと思いますか?

テキサスホールデムって結構「良いカード待ちゲー」なところもあるから。特に海外ライブキャッシュゲームとか、9人テーブルアンティなしとかだったら、8割以上降りるし降りてるとき暇じゃないですか。2時間ぐらいハンドをプレイせず降り続けるみたいな我慢のゲームだったりするんで、稼ぐってことを考え出したら飽きるんですよね。 だけど、Mixゲームだったら割とそんなことないんで。テーブル人数少ないし、それなりに参加もするし。だから、Mixゲームは 逆にアマチュア の方がいいんじゃないかなって思います。

玄人向きなイメージがあったので、アマチュアというのは意外です!

あとは、 「ポーカー自体は楽しいんだけど、でかい勝負するのはしんどいな」って人 には、Mixゲームめちゃくちゃおすすめです。逆に「勝負大好き!」みたいな人はあんまり向かないかもなって思いますね。戦いと殺し合いとかそういう感覚のものが好きな人は、 MixゲームよりはテキサスホールデムとPLOの2つが向いてると思います。

Mixゲームの中でも、ノーリミットとかポットリミットとかじゃなくてフィックスリミットゲームが好きな人たちは、結構ポットリミットを苦手とする人が多くて、ポットリミットが得意な、ポットリミットノーリミットが得意な人は、そのリミットゲームの繊細なところが苦手だったりするんですよね。

そうなんですね!自分の向き、不向きに合わせてゲームを選択すると一層楽しくなりそうですね!

Part2へ続く..

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ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

Kihara Naoya

木原直哉

日本のプロポーカープレイヤー。北海道名寄市出身。2012年WSOP $5000 Pot-Limit Omahaで優勝した日本人初のブレスレットホルダー。ポーカーの戦略やメンタル面についての教育活動や国内大会での解説など日本国内外でのポーカーの普及に努めている

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