
「勝利を再現する」北嶋隼人/HayatoK Part2
経営者としての顔を持ちながらも、長年ポーカー界で活躍されてきたHayatoKこと北嶋隼人さん。WSOP Lucky7's 7-Handed FT進出やKPC HighRoller2位など、2025年の活躍も止まらない。誰に対しても紳士な姿勢で、多くの人からの支持も受ける。戦い続ける、勝ち続ける、ために必要な努力の仕方、メンタルの安定のさせ方など幅広いテーマで伺いました。ポーカーメディアPOKERPICKSがお届けします。
ポーカーを始めたきっかけについて教えてください。
きっかけは、すごく尊敬している脚本家の友人と食事をした後に「連れていきたいところがある」と言われ、行き先は知らされず、着いた場所がアキバギルドでした。 それが10年ほど前で、その日からポーカーにドハマりしました。脚本家の方は「絶対にハマると思った」と言ってました(笑)
その日からすぐ本を買って勉強して、次の週には当時仲が良かった先輩とマカオのカジノに行って、キャッシュゲームをしました。
これまでポーカーを長年続けてこられたモチベーションを教えてください。
僕は多分ポーカー界でも古参だと思うんですけど、このモチベーションのままずっと続けられている人って稀というか、結構少ないんじゃないかなって思っています。 続けてきたモチベーションは、何かに挑戦し続けたい、というマインドがずっとあることが関係しているかと思います。
小さい頃の夢はプロ野球選手になりたくて、小学校、中学校は地元のボーイズリーグに入って、高校では甲子園やプロを目指す強豪校に入学しましたが、初めての挫折を味わいました。 自分はプロ野球選手になれないんだっていうことにその時気づいたんですけど、高校の時っていろんなものを犠牲にして野球に打ち込んでいたので、その挫折というのは自分の中ではかなり大きかったです。
目指していたものが無くなってポカンとしていた中で大人になって、ポーカーに出会った時に、世界一を目指せる競技と出会えたって思いました。 オリンピックは年齢とか体力勝負なところがあって、僕ぐらいの年になると金メダルを狙えるような競技はあまりないと思うんですけど、ポーカーは年齢問わず世界一を目指せるのが魅力の1つだと感じています。 常に自分の限界を超える、超えたいという気持ちがモチベーションにつながっています。
自身のプレイヤーとして強みを教えてください。
プレイヤーとしての強みは3つあると思っています。1つ目が的確な状況判断を下せること。2つ目が貪欲な向上心。3つ目が洞察力です。
僕は主にトーナメントをプレイするのですが、トーナメントっていろんな状況が目まぐるしく変化する中で、その状況を常に把握する的確な状況判断が大切だと思っています。 例えばエフェクティブスタック。自分が何bb持っているかでもかなり戦略が変わってきますし、あとはニアバブルだったり、ファイナルテーブルバブルの状況とか。テーブル内でのビッグスタック、スモールスタックが誰なのか、誰がどんなプレイスタイルか、誰がどんなことを考えてプレイしているのか等、常に状況を頭に入れて戦います。 その状況に対応できるプレイヤーとできないプレイヤーがいるんで、それが誰なのかも、僕は見ています。その状況に応じてベターな戦略を取り続けることがトーナメントでは非常に大事だと思っています。
いつも冷静に分析をされている印象です!
2つめの向上心に関しては引き出しの数を多くすることを常に頭に入れています。 遠征に行くたびに同卓したプレイヤーの良かったプレイをメモしたり頭の中に入れて、盗んで自分のモノにしています。 地域によってその時のトレンドのプレイもあると思います。例えば初めてEPTに参加した時はブラインドヘッズのアクションをみんな勉強していて、実力の差を感じました。 そういう良かったと感じたプレイラインは、その日が終わって部屋に戻ってから、自分なりに分析してアウトプットできるようにしています。
あとは主にノーリミットホールデムをみんなプレイすると思うんですけど、ノーリミットホールデムって結局ノーリミットなんで、何をやってもいいじゃないですか。 例えば、ターンのポットの300%ベット、フロップチェックコールからのターンのドンクベット、リバーのoopのベットに8倍のレイズ等、いろんな選択肢とか、いろんな引き出しがあるはずなのに、まだみんながやれてないプレーがたくさんあるんじゃないかっていうのを僕は常に模索しています。
トランプって52枚しかなくて、ベットラウンドはプリフロップ、フロップ、ターン、リバーの4つしかないんですけど、その組み合わせと状況によって、アクションが無数に、宇宙のようになって本当におもしろいですよね。 その宇宙みたいな色々なアクションのパターンを、自分でたくさん持っておいて、それをいつでも出せるようにしておきたいと、いつも考えています。
引用:somuchpoker
宇宙という表現はしっくりきました。近い状況が来た時に再現していくイメージですね。
3つ目が洞察力です。これはもう自分の最も特徴的な部分なのかなと思ってるんですけど、これは職業柄、僕が接客業というか飲食店をずっとやっていて、常に相手が何を考えているかとか、相手がどうしてほしいのか頭で自然と考えています。
それがポーカーでも自然とそういう状況になって考えることが多くて、例えばベットサイジングやこちらがアクションした時の反応。 プロになればなるほど全然動かないですけど、アマチュアとかはやっぱりチェックレイズした時にビクってなる人とかもいたりとか、嫌な表情だったり、目線だったりを僕はすごく見てます。できるだけ情報を取りたいので。
あと、1番癖が出るのはブラフだと思っていて、どういうラインでブラフするのか、ナッシングでやる人なのか、セミブラフがついたからやるとか、ショーされたハンドを意識して常に見てますね。 ブラフを見ることによって、相手がどういうプレイヤーかっていうのが細分化されるのかなって思っています。 ブラフのプレイラインって多分みんなもそうだと思うんですけど、なかなか変えられないと思うんですよ。 トーナメントで長く同卓していたら、なんとなくこの人はこんな時にブラフしてるなって違和感を感じると思うんで、それをハンドを見て答え合わせして、その時に自分がどうしたらいいかまで考える。ちゃんと対抗しないとダメなので。
後ほどお伺いしますが、隼人さんはお店を経営されているんですよね。洞察という点で共通点はありますか?
僕の業界では、洞察力ってすごく大事です。 洞察力っていうのは鍛えるもので、だんだんとわかってくるんですよ。 仕事が終わってキャストが帰る時に、背中越しにキャストが帰るのを見るじゃないですか。その時にそのキャストに漫画みたいに吹き出しを作るんですよ。 今日疲れたなとか、今日ここで働いて楽しかったとか、今日のお客さん嫌だったなとかっていうのをイメージで出す。それによって、ポジティブな場合はいいけど、ネガティブな場合は、ちょっと話聞こうか?とか、そこでコミュニケーションが取れるんで、それを毎日やってると、本当に人って洞察力が鍛えられると思います。
逆もそうで、キャストが出勤した時に彼氏と喧嘩したりとか、学校でなんか友達と喧嘩したりとか、テンションが低いまま席についちゃうと、お客さんと楽しく話せないじゃないですか。 話を聞いてあげて、できるだけ普段に近い段階に持っていく必要があるんですよね。 ポーカーって基本相手が嫌なことをやることが最適解みたいな感じのところもあると思うんで、相手が嫌なことをやってチップを取れるっていうのが1番いいことだと思います。 そういう部分は自分は長けてるかもなっていうのは思ってます。
引用:PokerNews
メンタルの面はどのように鍛えているのでしょうか?
身体が弱っている時は心も弱るし、心が弱る時は身体も弱るので、身体を鍛えることによって心も鍛えられると思っています。 この間、お医者さんに歩数が足りないって注意されたので、ウォーキングをたくさん入れたりとか、ジムに行ったりとか、そこは意識してます。 海外で朝ごはんを食べた後、ジムとか行ったら、やっぱり強いプレイヤーほど会うんですよね。そこで仲良くなったプレイヤーは結構たくさんいますね。
ポーカーにおいてマインドってどれぐらい重要なものだと捉えていますか?
すごく重要で、マインドコントロールができない人は、このポーカーっていうスポーツに向いてないと思うんですよ。 例えばヘッズアップでお互いが10の力を持っていたとしても、マインドがブレるプレイヤーって10も出せないので、相手との勝負より自分の勝負に負けてるっていうイメージですかね。
chipleader.comっていうオンラインサイトのコーチングをしているところがあって、そこのChance KornuthがXの投稿ですごく良いことを言っていて、メンタル的なことを書いてたんです。
たまに病気みたいなベットしてしまうことってあると思うんですけど、それを抑えられるっていうのはすごい重要で、トーナメントもキャッシュでも長期的に見るとすごく差がつくと思います。 なので、長期的に成績を出せてるプレイヤーってそこのメンタルのブレが少ないと感じてます。
海外遠征をよくされてると思うのですが、長期間海外遠征されてる時に精神を安定させる方法はありますか?
僕が気をつけてるのは、毎日の食事です。 特にモーニングではビタミンを取りたいので、果物や野菜をたくさん取るようにしています。
あとは運動です。さっき言ったようにジムに行ってます。あと、1番大事なのが睡眠です。ポーカーに限らず、仕事においても、人は7時間以上寝ないとパフォーマンスが落ちるっていうのは科学的に証明されているので、絶対に7時間以上は寝るようにしてます。 ホテルにマッサージがついてたらマッサージに3日に1回ぐらい行ったりとか。あとは部屋に湯船があると、就寝前にゆっくり湯船に入って疲れをとっています。体と心は繋がってるのでリラックスする事を心掛けています。
プレイヤーとして大成したなと思うポジティブなターニングポイントがあれば教えていただきたいです。
大成したとはいままで1度も思ったことないので、ちょっと答えにならないかもしれないです。もっと成長したいとか、もっとうまくなりたいっていう向上心は常に持っているので、その向上心がいろんな結果に繋がっているのかなとは思います。 自分の中で満足っていうのはまだ1回もしたことなくて、常にまだ見ぬ自分、理想の自分を上書きしていくというか、常にもっとうまくなりたいなと思っています。
ちなみに1番嬉しかった瞬間はいつですか?
優勝は毎回どんな時でも嬉しいです。金額の大小じゃないですよ。僕、優勝っていうものに、すごくこだわってるかもしれないですね。 どんなに小さい大会でも優勝したらめちゃくちゃ嬉しいんです。トロフィーをもらった瞬間に、トーナメントで唯一その日に認められるのが優勝者だけなんで、2位以下は全員敗者なんですよね。 勝者として称えられるのは優勝なので、なんか認められたわけじゃないですけど、自分を褒められる瞬間というか、優勝っていう部分ではどんな大会でも嬉しいですね。
Part2へ続く...
ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。
日本の経営者兼ポーカープレイヤー。WSOP Lucky7’s ファイナリストやKPC High Roller準優勝など国内外で活躍。