poker picks logo

「ポーカーは自由です」プロプレイヤー木原直哉 Part2

日本人として初めてWSOP優勝を果たしたプロポーカープレイヤーの木原直哉さん。ポーカー業界に大きな衝撃を残した木原さんに、ポーカーの勉強法や未来について語っていただきました!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

MIXの勉強方法


Mixゲームの勉強方法を教えてください。

勉強は、結局 プレイするしかない ですね。自分もそうなんですよ。

特にアメリカのMixゲームって、 アメリカでしかプレイできないものもすげえいっぱいあるんですよ。全く知らないけど、現地に行ってなんかよくわかんない状態でやらされて、 その場でテーブルで覚えていく んです。その中で、先にやってる人と議論するとか、 自分で頭で考えたりとか、あと手計算するとか、勝率計算できるサイトとかを活用したりもして。

でもそれは結局今までにあったなんかの派生なんで。基本的なものができていれば意外と大丈夫なんです。

思い出の1ハンド


これまでで1番ハッピーだったハンドについて教えてください

それはまあ、WSOP優勝した時ですね。 残り5人でめちゃくちゃ5人平たかった時。自分がすっごい僅差のチップリーダーで150万点ぐらいで、1番ショートの人でも100万点以上持ってるんですよ。

出典:

自分より若干少ないくらいのセカンドチップリがめちゃくちゃアグレッシブで。そいつ、WSOP、WPTメイン、EPTメイン優勝したことがある、世界に当時5人しかいなかった「トリプルクラウン」の1人で、そのFTでもめちゃくちゃアグレッシブにプレイしてて、実際明らかにスキル1番上。 ブラインド15000/30000で、そいつがCOから6万点にレイズ、自分のSBからQJT9シングルスートで3ベット21万点、それに4ベット打たれて66万点。

「トリプルクラウン」とぶつかったんですね。

ちょっと蛇足なんだけど、21万のポットベットに対する4ベッドって、21万×3+3万で66万なんですけど、ディーラーが間違えて72万とかって言っちゃったんですよね。で、それは違うと。自分コールしてフロップ見るし、フロップで絡まなかったらこちらは降りることができるので、その時に6万点はめっちゃでかいです。テーブルの人みんなで「66万だよ」って言って、 ディーラーさんはちょっと、不服そうな感じで(笑)

フロップは98と2か3。自分が9ヒットのラップになって。もうポットの半分ぐらい、 70万点ぐらいしかないオールインに相手がコール。 AAに対してトップペアラップって60%ぐらいある勝率あるんですけど、今回はたまたま相手がAAに加えてTJ持ってて、すげえ強くて。普通だったらアウツのはずの7とQを引いてもチョップにしかならなくて、TJを引けば勝ちだけど既に2枚アウツが減ってるみたいな状態で。 60%あると思ったら、32%しかなくて。 でもターンで7が落ちてお互いストレート完成。

TかJでのみ木原さんが上ストレートになってチョップじゃなくなりますね。

で、リバー。隣のやつが悪いやつで、ディーラーさんがリバー出すのに「Ten!」って叫んで、Tが出て(笑)悪いやつですね、右のやつ。でも、そいつはね、賞金も上がるし、一番強い人が飛んだ方がハッピーなわけですよ。5位と4位で$4万の差があるし。 若かったから自分もそいつとハイタッチしちゃった。これは本当に申し訳ないと思ってます(笑)

ティルトはする?


ここまで話して穏やかな印象を持ったのですが、そんな木原さんはやはりティルトしないのでしょうか?

します(笑) でも、自分のティルトはどちらかというとホットティルトより ソフトティルト の方です。

ティルトの定義って、普段のプレイを出来なくなることだと思うんですよね。大雑把に分類して2個あるんですよ。普段だったら降りるものを降りなくなるとか、ベットしないものをベットするとか、アグレッシブ側に行くのをホットティルトと言います。よくあるやつ。 逆に、ソフトティルトっていうのは、「普通だったら参加するかな」くらいのやつを大体降りちゃうみたいな。

固くなっちゃうんですね。

でも、固くなるとはいっても参加しなきゃいけないハンドは参加しますよ。 どんなに頭に来てても13+9を間違えることってないじゃないですか。それなりに算数できる人だったら、43×7とかも別に間違えないじゃないですか。かかる時間も大して変わらない。別にポーカーだってそうなればいいんです。

どんなに頭に来てても、同じプレイ ができれば何も問題ないじゃない。ただ、今自分の頭に血が上ってるっていうことを客観的に評価できてればいいんで。例えば、79sがボーダーだと思ってるのに59sで参加しちゃうとダメですよね。わかってたら降りればいいですよね。そうやって、 テーブル上でのプレイと精神を切り離して おけば、頭に血が上ること自体は別に何も問題ないっていう感覚です。

日本のIR事業について


その、日本のIR事業がそろそろ始動しそうなところだと思うんですが、

そうなんですか?

2029年にはMGMとオリックスとで、大阪で、なんとなく形になりそうだなみたいな?

でも、自分がポーカーを始めた2007年には、「2013年にカジノできる」って言ってて。 2010年頃は「2017年ぐらいにカジノできるよ」、 2014年ぐらいには「東京オリンピック前にはカジノ作るよ」、2017年になったら「東京オリンピックまでには無理だけど、2023年にはカジノ作るよ」、2019年には「2024に作る」って言ってて。今、2024年は「2029年に作る」って言ってるけど。 何が進歩したの?って感じはしますね。本当にできるの? 「あと5年」がもう20年近く続いてるんですよ(笑)

確かに、そう聞くとできない感じがしますね(笑) ではもし万が一仮に、できたとしたらどう思いますか?

別にいいんじゃないですか。国としてはあった方がいいと思いますよ。自分としてはどうせ全然行かないと思うからどちらでもいいかなって感じですかね。 でももし日本の法律が許して、日本で参加費$5000くらいの規模のトーナメントが開催されたら、 マジで1万人参加すると思うんですよ。日本人だけじゃないですよ、世界中から人が集まってきます。

これは、オーバーな予測じゃなくて割とリアルな予測なんですよ。だってこの間のJOPTメインの参加人数が今回4500人くらい。これを合法的に還元率90%で賞金を出したら世界中から人が集まってくるわけだし、$5000で1万人でも何も無茶な話ではなくて、 至極当たり前の数字ぐらいの感覚なんですね。だからもし、仮にカジノができたとしたら、 トーナメントはめっちゃ盛り上がるだろうな って思います。下手したらWSOPの、メインは別格だけど、メイン以外のトーナメント中では最大の賞金総額になるんじゃないかって思います。だって、50万円×1万人、50億円集まってるトーナメントってWSOPメインしかないですからね。

出典:大阪IR株式会社

WSOPメインに次ぐ2番目の規模の大会を開けるくらいの、今の日本にはそれぐらいの力があります、ポーカー業界。ただ、法律がそれを許さないだけです。 わくわくする話ではありますよね。

ポーカーはギャンブル?ゲーム?


ギャンブルはお好きですか?

あんまり興味がないです。カジノに行ってもポーカー以外は一切やらないんですよ。ゲームが好きで。「プレイヤーかバンカーか」って言われても別にどうでもいいですね。お金を賭けることに対してアドレナリンが出るのかもしれないけど、自分は「負けたらやだな」ぐらいにしか思わないです。

ポーカーはゲームかギャンブルか、みたいな話題についてどうお考えですか?

ゲームかギャンブルかって、別に反対方向向いてるわけじゃないんですよ。ゲームかどうかはx軸、ギャンブルかどうかはy軸みたいな感じ。ポーカーってお金賭けなかったらピュアゲームだし、お金賭けたらゲーム+ギャンブルだし。フリップアウトみたいな感じになったら、もう完全にギャンブルじゃないですか。

ポーカーの中でも、よりスキル要素が大きいとか、ゲーム要素が大きいとか、ギャンブル要素が大きいとか、そんなのでどこに位置するか変わるだけであって、 別にゲームかギャンブルかは反対方向に向いてない んですよ。だからその議論自体意味がなくて。

確かに、ゲームとギャンブル両立してますね。

でも、 ポーカーは間違いなくゲーム ではあるんですよ。お金を賭けるとギャンブル性が出てきて、それが高額になるほどギャンブル要素が大きくなってって。 二面性はあるけど、本質はどこかって言ったら、ゲームだと思うんですよね。だってお金賭けなくてもポーカーできるし。ポーカーがゲームとして全く面白くなかったらエムホールデムやる人なんかいないですよ(笑)

エムホールデムは賭けられないけどしっかり人気がありますね。

でも、お金賭けなかったらポーカーつまんねえよって言ってる人はいる。でも、だったらその人はブラックジャックばかりやったらいい。それでもポーカーやってるってことはゲーム要素、好きなんでしょ。って見てて思いますけどね。 もし、お金かけなかったらポーカーやんないって言うんだったら、別にそのスタンスはいい。でも、それは「ポーカー=ギャンブルでゲーム性0」ってことを意味しないよって思いますね。

ポーカーは、本質的にはゲーム で、そのゲームを使ってギャンブルをしているだけっていうのが、自分のポーカーに対するスタンスです。

本質はゲーム。

そう、本質がゲームなんだから面白くなきゃいけない。 そのためには、牛歩みたいなことがプラスになる状況をゲームから取り除かなきゃいけない。

それから、ライブキャッシュで勝つためには、いかに待つかが大事なんですよね。 いかに弱いハンドで「なんか暇だから参加しちゃう」っていうのやめて、いかに待ち続けることができるかっていうのが大事なんですけど、 これってゲーム性をめちゃくちゃ落としてると思うんですよ。

楽しむために参加することが期待値を落としてしまいますね。

ゲームとして将来的に成立していくためには、その面白くないプレイが期待値マイナスにならなきゃダメだと思うんです。だから、いっぱい参加しなければ勝てないようなシステムを作っていく。例えば、アンティがバカでかくって、人数は少ないとか。アンティが大きくなればなるほど、参加しなきゃいけなくなって。

いっぱい参加したい、ゲームを楽しみたいって人の不利を小さくしてあげなきゃいけない。なので、アンティは極力大きくしなきゃいけないっていうのが自分のスタンスですね。

ASPTでの新たな取り組み


ASPTの未来についてお伺いしたいです。例えばラウンドフォーラウンドとか、今までになかった取り組みを色々されてると思うんですけど、その意図とかを教えてください。

ラウンドフォーランドと、スタッド系ゲームのアンティのまとめ払い。 これは自分と余語さんで話し合って、現状だるいよね、これは変えられるよね、みたいなところをお互いが共通認識で持っていて。

ラウンドフォーラウンドはどういう意図なんでしょうか?

よく牛歩って話題になるじゃないですか。「牛歩が得か得じゃないか」とか、「マナーかマナーじゃないのか」、「ルール的にオーケーなのかダメなのか」とかで。 でも本当は、そんな議論が出ること自体がおかしい。牛歩はした方が得なんですよ。「他の全員が牛歩しなかったら自分を牛歩しなくて済む」っていう人もいるけど、全員が牛歩しない中で自分のテーブルだけ牛歩するのが1番得なんだから。 牛歩に関してマナーとかっていうことを持ち出す時点で間違っている。

あれは システムで解消 できるんですよ。それをやらないのは運営の怠慢だと思ってますね。

なるほど、それがラウンドフォーラウンドなんですね!

「我々が大会やるんだったら、そういうところやってみたいよね、やってみてダメだったらやめりゃいいじゃん」って感じで色々やってみて、面白そうだから続けようって感じです。ラウンドフォーラウンドは、完全にうまくいったので、 真似してほしい です。

前回JOPTはラウンドフォーラウンドを真似してくれたんですよね。業者としては競合になるのかもしれないけれど、良いものだと思ってやってるのでぜひ真似してほしいし、WSOPやWPTにもやってほしいんですよね。 あと、アンティのまとめ払い。この2個に関してはマジで真似してほしい。良いもんだから、とても良いもの。 トラブルがなくなって、ゲームがスムーズになって、マイナスなことが何もない。

いいことだらけなんですね!

1点あるとすると、TDがちょっと大変(笑)

でもTDが大変だからってやらないってのは、運営の怠慢だし、やった方がそのトーナメント全体に対してプラス。みんなの満足度が上がるわけですからね。新しいことって色々やってみたいな。新興の小さい団体だからこそできるっていうところもありますね。 色々やってみて、ダメなものはやめる。 その繰り返しかなって思っています。

最後に


最後に、ポーカー業界でこれだけは今なんか伝えたいなだったりとか、ご意見があれば頂きたいです。

うーん。 ポーカーのプレイって自由 なんですよ。結構最近GTOとかそういうのを意識する人が増えてきてるんだけど、ポーカーってどうプレイしてもいいんですよ。期待値マイナスのプレイをしたって別に自由なんですね。

ただ、期待値のマイナスのプレイに負けた時に「なんだそのハンドは」っていう風になるのって、ポーカーが自由であるっていうことを全く理解していない弱い人の考え方だって自分は思っていて。だから、そういうところに対して批判するのは、自分が弱いから、そういう考えになってしまったんだっていうような風潮を作りたい。

表通りのプレイをして来ない人に対して「やりづらい」って感じるのは、表通りのレンジに対してしかプレイできないっていう、要するに下手な人なんですよね。 相手が実際どういうレンジでプレイしているか、しっかり想定してプレイすることができないから、そういう風に批判してしまう。 それは弱い人のたわごとなんで、かっこ悪いこと なんだと。自分は弱いって言ってるだけなんだって、そういう風潮を作っていきたいかな。それが真実なんだけど。 ポーカーはどうプレイしてもいい。自由なんで。

そこが何より大事かなって思ってます。 ポーカーは自由 です。

Poker Picks

Poker Picks

ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

Kihara Naoya

木原直哉

日本のプロポーカープレイヤー。北海道名寄市出身。2012年WSOP $5000 Pot-Limit Omahaで優勝した日本人初のブレスレットホルダー。ポーカーの戦略やメンタル面についての教育活動や国内大会での解説など日本国内外でのポーカーの普及に努めている

recommend