「ポーカーとNFTゲームの共通点」コインムスメ代表 辻拓也
こんにちは。みなさんはポーカーで勝てていますか?ポーカーで勝ってプロとして生きていく、カッコイイですよね。しかし、その道は非常に過酷なものです。その理由の一つとして"レーキ"があります。レーキはどんなトッププロでも倒すことができない最強の敵です。今回はレーキが私たちプレイヤーにどのような影響を及ぼすのか、戦略にどのような変化が起こるのか少し深堀りしてみたいと思います。少し難しい内容ですが、頑張って学んでいきましょう!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。
レーキとはポーカーをする際に運営側が取る手数料のことです。レーキはキャッシュゲーム、トーナメントゲームのいずれにおいても発生しており、プレイヤーに対して大きな影響を与えます。
取るレーキはカジノ、お店によって異なりますが、potの2.5%~10%程度をレーキとして取ることが多いです。
そもそも、なぜレーキが必要なのでしょうか。ポーカーはカジノゲームの中でも特殊で、ディーラーとの勝負ではなく、他のプレイヤー同士の勝負となるからです。そのため、レーキを取らないとカジノ側はポーカーからの収益がなくなってしまいます。日本のアミューズメントカジノだと入場料があったり、換金できないなどの理由からあまりイメージが湧かないかもしれませんが、海外のカジノではレーキはポーカーを開き続けるために必要な物になります。
さて、レーキがあると我々プレイヤーにどのような変化を与えるのでしょうか。基本的に、レーキはプレイヤーに不利な影響を与えます。ここでは、レーキが与える影響をいくつか紹介いたします。
皆さんが日常的にしている勝率やオッズに影響します。具体的には、レーキが発生することで必要な勝率が下がります。とあるカジノのレーキの例を見てみましょう。
現在、BTNにいるライバルが3bbにレイズをしてBBのあなたまでfoldで回ってきました。このテーブルはフロップが開かれると2bbのレーキが取られます。現在potに3bb+0.5bb+1bb=4.5bbあります。このときBBのあなたが必要な勝率を計算してみたいと思います。
レーキなし
2bb/(4.5bb+2bb)x100=30.7%
レーキあり
2bb/(4.5bb+2bb-2bb)x100=44.4%
このように、レーキの有無で、BBのあなたに必要な勝率が約14%も変わります。この影響から、BBのあなたはより勝率の高いハンドが必要となり、callできるハンドはレーキがない場合と比較して大きく減ります。
今回はわかりやすい例を出しましたが、この影響は必ず起こります。
高い勝率が求められる理由から、プレイヤーは無駄な手に参加することを避け、より強いハンドでのみプレイする傾向が強まります。レーキが高ければ高いほど、負けたときのコストが増えるため、リスクを減らすためにタイトなプレイが促進されます。したがって、本来callできそうなハンドでもfoldを強いられることもあります。
ポーカーはレーキが無い場合は半分がプラスになり、残りの半分がマイナスとなります。しかし、レーキがあると改修されたレーキ分だけ負け越す人が増えます。
こちらのグラフは、海外のとあるオンラインポーカーサイトの利益分布です。縦軸がウィンレート(BB)、横軸がプレイ人数(%)です。
ご覧の通り、レーキがある分、約70%のプレイヤーがマイナスになっています。このように、レーキは、トータルの収支がマイナスになる人数を大きく増やし、平均以上の実力を持つプレイヤーでさえ長期的にプレイすると負けに追い込む力を持っています。
レーキはポットから取られるため、大きなポットを作ることでその影響を相対的に小さくする戦略が有効になる場合があります(後述)。したがって、よりアグレッシブなプレイを検討する必要があります。
ところで、レーキはいつ発生しているのでしょうか。レーキの取り方はお店などによって異なります。ここでは代表的な3つのレーキシステムについてご紹介いたします。
自分がプレイしている環境は、どのようにレーキを取っているのかあらかじめ確認しておくことをオススメします。多くのお店は尋ねると答えてくれるので聞いてみるとよいでしょう。
代表的なレーキシステムです。レーキが発生するのはフロップからで、プリフロップではどんなにアクションが発生してもレーキが取られないシステムです。
戦略の変化
このシステムではプリフロップでハンドが完結することの価値が高いので3betや4bet、スチールを積極的に行うことが検討されます。例えば、BTNにいるあなたにAKoが配られました。この場合、no flop no dropの卓においては、特別な事情がなければcallで止めることはなく、基本3betを返すほうが利益的であると考えられます。実際、GTO Wizardにおいても、callよりも3betが多く割り振られており、上記理由を裏付けるようなレンジ構成になっています。
GTO Wizardのcash solutionにある50nl, 500nlのレンジはこのno flop no rakeを想定して計算されています。したがって、以下の2つのレーキシステムにおいては、やや不適切となる可能性があります。
一部のポーカールームやゲームにおいて採用されているレーキシステムです。このシステムの場合はプリフロップにおける3betが発生する、またはフロップを見るのいずれかを契機にレーキを計算しはじめます。プリフロップのオープンレイズではレーキは発生しません。
戦略の変化
3betからレーキが発生してしまうので、過度な3betはレーキを過剰に生むリスクがあります。GTOWizardにおいても、no flop no dropよりもcallが増えていることが読み取れます。
アグレッシブに3betを返すプレイヤーがこの環境下でプレイする場合は改めて妥当性を検討する必要があるかもしれません。
一定時間経過した際に、卓に座っている全員が既定の手数料を支払うシステムです。多くの場合は、タイマーが鳴ったらディーラーに規定額のチップを渡します。従って、プレイヤーは時間までにレーキ代を稼ぐ必要があります。
戦略の変化
GTOWizardでは、Time chargeを加味した戦略は検討されていません。しかし、ポーカーのハンド単位ではレーキが発生しないため、純粋なチップ期待値(cEV)の戦略になると考えられます。したがって、GTOWizardにおいても、cEVの戦略を採用することが近いと考えられます。
多くのお店では手数料も青天井で取るわけではなく、一定の上限を設けています。例えば、たとえpotの10%でも8bb以上はレーキとして取らない、10$以上は取らないなどです。これをキャップといいます。capがある場合、potを膨らませることでレーキの影響が相対的に小さくなる場合があります。potの10%8bb capのレーキシステムで例を見てみましょう。
8bbcapということは80bb potまでは10%取られるということです。しかし、300bb potまで大きくなると8bb以上のレーキは取らないのでpotに占めるレーキの割合は8/300x100=2.67%とわずかなものになります。したがって、potを膨らませることが正当化される場合があり、よりアグレッシブなプレイが選択されることもあるということです
チョップレーキとは、お互いが同じ役で引き分けだった時に取られるレーキのことです。
みなさんはこんな経験はありませんか?1枚ストレートボードでお互いストレートを持っていそう。でも強いからとにかく大きくbet!相手にコールされて同じストレートで引き分け。potは仲良く半分こ。
実は、この場合、レーキのせいで負けています。
レーキがなければpotは均等に分配されるので、プラスマイナス0か、ややプラスになります。しかし、レーキがあるテーブルで引き分けの場合、potからレーキを取ったのちに各プレイヤーに均等に分配します。つまり、レーキ分マイナスということです。このように、レーキのあるテーブルでチョップが強く疑われるときにむやみにpotを膨らます行為はかえって損失を増やす可能性があります。
レーキがあることでマイナスならないか、今一度検討してみましょう。
カジノによっては”ブラインドチョップ”が出来る場合があります。ブラインドチョップとは、SBまで全員foldで回ってきたとき、SBとBBが合意のもとでハンドを見せずにそれぞれのブラインドを手元に戻し、potを無効にするアクションです。
この場合、レーキは取られません。つまり、お互い損なポジションにおいて、レーキの徴収もお金の損失もなく次のハンドへ行くことができるということです。
ブラインドチョップをすることでどのようなメリットがあるかというと、レーキが取られないことから、プレイヤーの総利益が上昇します。長い目で見てお得ということですね。
ブラインドチョップを提案された際は、喜んでお受けすることを推奨いたします。なお、ブラインドチョップをした際、AAだったら悲しいのでハンドは見ないこともあわせて推奨します。
レーキはポーカーをする上で、我々の利益、戦略、を大きく変えます。また、ポーカーで勝つためにはレーキの考慮が不可欠です。少しプラス程度ではレーキでマイナスになってしまうため、より高い実力が必要です。また、今回紹介されなかったレーキシステムでも、今回の情報をもとに戦略を応用することができます。記事をきっかけにレーキについて考えてポーカーを楽しんでいただければ幸いです。
ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。