poker picks logo

「蛇口から出るお金を拾う仕事」プロプレイヤー負野智光 Part1

長年海外でキャッシュプロとして活躍する負野智光さん。さまざまな業界を経験してきた負野さんが語る、ミックスゲームの魅力やキャッシュゲームにこだわる理由について差し迫ります。ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

「成長実感が突き進む原動力」


ミックスを始められたきっかけを教えてください

僕ね、人生6年単位で飽きるんですよ。ポーカープロの6年ぐらい経った時に面白いからやるみたいな感情よりも仕事と捉えてしまったというか。。自分の成長というか頭打ちなのかなっていう、うっすら思っちゃうわけですよ。

プロならではの悩みですね

ゲームのプロの梅原さんの「人って物に飽きてるんじゃなくて、自分の成長が止まった時に飽きるっていう言葉を使うんだ。」という言葉が好きです。 成長し続けてて勝ち続けてる人は絶対楽しい。やっぱり成長がなくなった時になると飽きたわって人は言うんですよね。

「ちょっとおもんなくなってきたなノーリミットホールデム」って思った時に、木原さんなど周りからミックスゲーム勧められたのがきっかけです。

ミックスゲームの面白いポイントはどういったところでしょうか?

飽きない!1ゲームに1回ゲームが変わるから飽きてる間がないっていう点と、あと単純にノーリミットホールデムと比べて圧倒的に参加していいっていうのが良いですね。

飽きてないってことは、先ほど成長の過程だと人は飽きないって話があったと思うんですけど、ある意味まだ成長の過程の感覚があるってことですか?

そうですね。まだまだ全然。例えば、ポーカーの数あるゲームの種類が50として、よくやるゲームだけで15から20だと思うんですけど、その中で1番習熟度が高いゲームはなんですかって聞かれたら、圧倒的にノーリミットホールデムです。だって、勉強した時間が違いすぎるんで。だって、6年間か7年間、ホールデムだけを頑張って勉強してプレイしてきたわけですよ。で、4、5年前に14種目増やしました。

それだけ多くのゲームをされていると成長の実感を常に持てますね!

ただ、人間の成長曲線ていうのはどうやっても最初は早くて、ある程度まで行くと緩やかになる。14種目増えてるから、ほとんどの種目はまだこのびゅっと上がってるステージなので、まだまだやればやるほど僕は伸びる。

そしてありがたいことに僕はゲームの中で学べることが多いです。好きこそものの上手なれって言いますけど、やっぱ続けれることって上手になるんですよ。

自身の成長を客観的に捉えることは重要ですね

だから、今は稼ぐためにプレーしながらも日々勉強だし。で、それこそほんまダメなとこで、日本帰ってきたら頑張って座学しようとか思うんだけど、ゆっくりしてます。で、向こう行って、やべ、勉強足りてないなとか、帰ったらまた勉強しようって同じことを繰り返してるバカ者なんですけども。でも、向こうで必死で日々努力しながら、稼ぎながら、勉強もしてるっていう。で、まあまだ伸び続けてるっていう感じなのかなと思います。

「トーナメントは嫌い?」


なぜトーナメントはあまりプレイしないんでしょうか?

自分の幸福度はめちゃめちゃ低いですし、キャッシュの方が楽やし、楽しいし、稼げるっていう絶対的な心理がありますね。トーナメントはプロが最も負けやすいルールなので、やっぱりかなり運ゲーっていうのがありますよね。キャッシュは絶対にプロが勝つし。だからトーナメントはアマチュアの人とか弱い人が間違って勝つことがめちゃめちゃあるわけですよ。特にノーリミットは。 なので僕はノーリミットホールデムのトーナメントからどんどん離れていったというか、初めから好きでもなかったです。初めからずっと嫌いでした。

確かに、初心者さんが優勝ってよくある話ですよね。

僕は勝ちたいからやってるんですよ。 負ける可能性が高いゲームをやりたいって意味わからんじゃないですか。 で、逆に言うと弱い人もそうなんですよ。勝てるゲームの方が良くないですか。 だからトーナメントとか人気あるんですよ。つまり、 弱い人はトーナメントに集まるし、強い人はトーナメントを嫌ってキャッシュゲームに集まるっていうのは、なんかこう自然な流れというか、自然の摂理なのかなっていう気はしてますね。

なるほど!

プロからすると、キャッシュゲーム勝ってるやつが1番強い。それ以外の答えはないんですよ。 あいつブレスレット何個持ってる。いや、でも俺の方が強いし全然問題ない、みたいなのはよくある話なんですよね。

「トーナメントは1位が幸せのゲーム」


最近ではミックスのトーナメントも増えてきていますが、あまり興味はないのですか?

うーん…。何%の人が楽しく過ごせるんですかね、トーナメントって。例えば、100人出ました。一般的なインマネ率にすると、15人がインマネです。15位って楽しいんですかね。 15位だ!やった!よっしゃ!ってならないんですよ。じゃあ5位は?そんな嬉しくなくないですか。 つまり1位以外不幸なんですよ。 100人中99人不幸になるゲーム、楽しくなくないですか。

例えば、30分ブラインドで、100人でトーナメントをした僕が優勝する確率ってどのぐらいやと思います?じゃあ、アミーズメントと設定します。つまり、ほとんどの場合僕が1番強いです。100人の中で、お店や大会によってレベル差は色々あると思いますけど、僕何パーセントの確率で優勝しそうですか。

15%とかでしょうか?

ミックスですら、今の僕とアマチュアの一般の日本の人のレベル差を考えても、僕、10%を超えないんじゃないかなと思います。 ノーリミットホールデムなら明確に3、4%をやと思います。

つまり、僕、100回出て97回は不幸で帰るんですよ。で、いつも言うんですけど、 期待値は圧倒的にキャッシュゲームの方が高いです。96%、97%。悲しい気持ちで帰る。 たまに優勝したらまあお金は結構増える。いや、でも別にその2日間、3日間はキャッシュゲーム毎日打ってる方がお金はトータル的には圧倒的に増える、ってなると、トーナメントは期待値的に考えたら出たくなくなっちゃうんですよね。

「蛇口からお金・期待値を拾う仕事」


僕はポーカーっていう仕事は、蛇口からお金が出てくるのを拾う仕事だと思ってます。 勝つことはもう準備できてて、勝つのは当たり前なんですよ。そして寝てる間もトイレに行ってる間もこのお金は出続けてます。 このお金を長時間、できるだけ長く拾うだけの仕事なんですよ、僕らって。つまり、その期待値を落として、その蛇口から拾えないお金が落ちていくことが僕は許せないんですよ。

蛇口…とてもわかりやすい例えですね!

つまりトーナメントをするっていうのはそんな気持ちです。自分で働きに来てるのに、今は日本にカジノがないので、僕たちは海外に行くしか仕事ができません。 行って期待値が最も高い仕事をせず、地位や名誉が欲しいか、隣に出て期待値を失ってる自分が許せないんですよね。

「気になるプレーヤー若き天才Amu」


やっぱり日本が海外と比べて圧倒的にレベルが低い理由っていうのは、賭けれない、が1番大きいと思います。もうずっと言い続けてきたんですけど、ポーカー賭けずに強くなった人はいない。

ただ最近、その概念を打ち破る人が出てきて、ちょっと衝撃が走った。僕らが言ったことは間違いやったんかなって心配になってるっていう感じですね。

それはどなたですか。

Amuくんっていう子ですね。 若き天才。 最初は、「また理論武装だけした、ちょっと頭の固い高学歴な子が出てきたのかな」って僕も多分みんなも思ってて。だって、今までどれだけ高学歴でも、賭けずに強くなった人は1人もいなかったんです。

ちょっと前にプライベートでというか、お互いゲストとかで喋った瞬間に、「あー本物や」 「どうやって賭けずにここまで強くなった、不思議」とびっくりしました。 こういう天才が現れて、ちょっと時代が変わったんだなって思わされますね。

「マカオ時代の勉強方法」


ミックスゲームの勉強法を教えてください。

ミックスゲーム強い人とか、ミックスゲームに素質がある人で集まってずっと勉強会をしています。 4年ぐらい前から、元々僕より強かった人とか、一緒ぐらい強い人とかの家に集まって、 それこそ頑張って分析してます。集合して分析してますよ。ノーリミットホールデムの勉強だって当時はAIがなくて、今より全然弱いちょっとしたツールがあっただけですからね。

ではどうやって分析していたんですか?

僕はマカオではプロ3人で住んでました。 だから家で自分らで日々のハンドを持ち寄って、 稼働が終わったらプロ同士でずっと分析してました。 で、そこにまた誰かが、部屋が何個かあったんで泊まりに来たりとかして、毎日ポーカーをして、こんなハンドがあった、わからんって話し合いをしていました。 同期で喋ってわからんかったら、ちょっと自分らより先輩のプロにこれどうすか、って聞いて。それでも意見が別れるんですけどね。でも意見が分かれるってことは、結構際どいハンドだから問題ないんですよ。ひどいのは、自分が意見1人側やった場合。自分のプレーはみんなが言うスタンダードよりずれてそうだってなるんですよね。

やっぱりミックスとかは特にまだツールが発達してない分、話し合いが大切になっていきますよね。

そうです。 そんな感じで、みんなでこうじゃないこうじゃないって議論して、ここ4年でミックスゲームもそこそこ強くなったのかなあっていう感じではありますね。

Part2に続く

Poker Picks

Poker Picks

ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

Ono Tomomitsu

負野智光

プロプレイヤーとして世界各地に飛び回り、国内では大会解説やコーチングを行う。YouTube「オーノ塾」などを通じてプレイヤーの育成貢献に努める

recommend