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「損得よりも善悪-フロアの流儀-」名人戦TD 奥田大雅

今回はプレイヤーの皆さんだけではなく、ディーラーやトーナメントに関わる運営者の方にも必見の内容です。名人戦トーナメントディレクター、JOPTフロアリーダーなど、ポーカー大会の運営スタッフとして活躍している奥田大雅さんに、日頃聞けないフロアスタッフの仕事内容や仕事の流儀について伺いました!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

たいがさんの経歴


これまでの経歴について教えてください。

ポーカーに出会ったきっかけは父親の会社の会議室でポーカーをしている人たちがいて混ぜてもらったことです。ディーラーは2020年に銀座のパラハという場所でアルバイトを始めたのがきっかけですね。銀座のパラハでディーラーのアルバイトを始め、その後2年半から3年ほどそこで勤務していました。その後は大会の勤務やコンサルティングなど、フリーランスとして働いています。

もともとはポーカープレイヤーをやりたくてこの業界に飛び込んだのですが、思ったよりもディーラーやフロアの仕事が伸びたこともあり、プレイヤーとしての活動は年に3回程度海外に行くくらいになっています。

フロアの仕事内容


一般的なフロアスタッフの仕事内容について、簡単に教えてください。

まず皆さんから見えてるところでいうと、シートカードやチップラックの回収、どの卓を使ってトーナメントを広げていくかを検討し卓を広げたり、テーブルブレイクをすることなどが挙げられると思います。そういうところが多分すごく見えてると思うんですけど、それ以外にも、見回って抑止力的な働きをしたり、お客さんとコミュニケーションをとって場を和ませたり、そういう細かいことも重要な役割だと思っています。日本だとより飲食店のフロアスタッフに近いところもあると思います。

フロアリーダーなどもされるたいがさんご自身の役割を教えてください。

僕は動き回るタイプというよりは、みんなに効率的な動き方を指示するタイプですね。 でもすごく忙しくなった時とか、トラブルがあったときに最終的には僕が自分で対応するっていう、責任と覚悟を持ってやっています。 そのせいか偉そうって言われること多いですね。冗談で言われてるのか本気で言われてるのかわからないんですけど(笑)

大型大会でのフロアの1日のスケジュールを教えてください。

僕は夕方から朝にかけての深夜帯のシフトが多いので深夜帯の話をしますね。

12:00:起床
14:00:出勤30分前、早めに会場入り。お客さんに挨拶
14:30:トーナメント開始1時間半前、TDとどのトーナメントがどの卓を使うか相談。使うモニター、受付からの導線を確認
15:30:トーナメント開始30分前、受付開始。椅子、AIマーカー、カットカードなどの備品確認。ディーラーの着席も確認。
16:00:トーナメント開始後、卓を広げるか、テーブルの人数を増やすのかの判断。AIコールの監視、シートカードの回収、テーブルブレイクなどなど。
19:00 フロアのご飯休憩管理
27:00(3:00):ハンドフォーハンドの監督、入賞のカード配布、FT等の撮影準備
30:00(6:00):トーナメント終了、片付けなど
30:30(6:30):退勤
31:30(7:30):帰宅
32:00(8:00):就寝

だいたいこんな感じです。睡眠時間はいつも足りないです(笑)

フロアをしていてやりがいを感じる瞬間を教えてください。

頼ってもらえることが多い。 「たいがさんならなんとかしてくれる」 と言われることが多く、その信頼を感じる瞬間はやりがいに繋がります。

フロアをしていて苦労する瞬間を教えてください。

事前準備が弱い大会 に出勤した時です。僕は準備にすごいこだわりを持っているので、参加人数の想定や導線のシミュレーションが不十分な大会ではすごい苦労するなと感じます。

たいがさんの仕事の流儀


仕事のポリシーを教えてください。

仕事だけでなく、人生で大事にしているのが「 損得より善悪で物事を考える」 っていうことです。どちらが自分の正義に合っているか、 どっちの自分の方がかっこいいか 、みたいな基準でできるだけ物事を考えるように心がけています。どんなお客様相手でも、損得でなく善悪で正しいと思える対応を選ぶことを意識しています。

フロアとしてディーラーに伝えたいこと


フロアとしてディーラーに言いたいことはありますか?

すぐにフロアを呼んでほしい ですね。フロアを呼ばれて迷惑だなとか嫌だなって思う人は多分いません。早く呼んでもらえればトラブルを小さい内に解決できることも多いし、フロアを呼ぶことを悪いことだと思わないでどんどん呼んでほしいです。

ディーラーにされると困ることなどありますか?

さっきすぐフロアを呼んで欲しいって言ったんですけど例外もあって、「ツーギャッパーなんですけど、バランス取らなくて大丈夫ですか」みたいな呼びかけは意外とこっちも困ることがあります。「その卓で2人飛んでる間に後ろの卓では3人飛んでるかもしれないし、シートカードを回収している時点でギャッパーには気づいてるから大丈夫だよ」と言いたいです。 それから、「フロア!」と呼ばれて今している作業を全て取りやめて行ったら「ラック回収です」って言われて困ることもあります。フロアは優先順位はつけて仕事をしているので、ラック回収などは通りかかった時に声かけてもらうくらいだとありがたいです。

あとは、意図があって特殊な行動をしたときに、それについてその場で聞かれると困ることがあります。線引きは難しいですが、信頼してもらえるように頑張るので、必要なことだけ言ってもらえると嬉しいです。

信頼できるスタッフ


フロアとディーラー、両方の視座を持って気づいたことはありますか?

普段フロアばかりしているので、ディーラーを久しぶりにした時には、「フロアが信頼できないと怖いな」と思いましたね。

フロアが信頼を得るにはどういう要素が重要だと思いますか?

まずは見た目。清潔感があって、シャキッとしておく必要はあると思います。あと、僕が普段フロアの子に言ってるのは「覇気を纏いなさい」と伝えています。自信のないフロアの様子はプレイヤーにもディーラーにも不信感を与えてしまう。フロアが自信を持っておくのは重要だと思います。

よくある、「フロアとディーラーはどちらが偉いか」みたいな論争についてどうお考えですか?

僕は、 「フロアは偉くなきゃいけない」 と思ってます。ディーラーについて責任を取るのはフロアであり、その上で責任を取るのがTDです。ディーラーを守るためにフロアが偉くある必要があるし、その分責任のある仕事をしています。

ただ、確かにフロアは業務上では偉いけど、だから横暴な態度を取って良いとか、ディーラーにタメ口でどうこう指図して良いというわけではないですね。これって多分社会でも一緒で、上司は確かに偉いけど、だからなんでもして良いわけじゃない。でも部下が失敗した時に頭を下げて責任を取る。それが上司の仕事で社会の構図なのかと思います。 僕としては、ディーラーはフロアを敬ってほしいし、フロアもディーラーを敬うべきだっていうことをみんなにわかってほしいですね。

フロアのたいがさんの思う「良いディーラー像」を教えてください。

僕は結構体育会系なので、ディーリングとかは自分で勝手に練習してこい、出来て当たり前だと思ってます。そして、技術については一定値を超えたら誤差だと思っています。 技術以外について挙げるなら、愛嬌ですかね。ちょっと失敗したら素直に謝る、それ以前にただニコニコしてるだけでも印象は違うと思います。結局最後に責任を取るのはフロアなんですけど、卓の雰囲気が良いだけで何かミスしてしまった時も穏便に済むことが多いですね。

上手いと思うディーラーがいれば教えてください。

みんな口を揃えて言うと思うので面白味は無いかもしれないですが、うっちーですかね。任せていて何も心配がなく見ていられます。ただディーリングの上手さって偏差なんで、ある程度上手くなったらその差ってほとんどなくなります。 それでも彼女が評価されるところは謙虚さだと思います。ちょっと高くついちゃったディーラーとかは、「なんでFTじゃないの」とかすぐ言い出すんですけど、彼女ってそれがまったくなくて。「ゴミ捨てしてきますよ〜」とか「案内係やりますよ〜」とか。そういうひたむきな人柄が評価されてる気がします。

たいがさんが困ったときに相談するフロアやTDがいれば教えてください。

あんまり表に出てくる感じの人じゃないんですけど、あんずさんですかね。ハンターサイト主催のイベントの深夜帯のTDをしています。何か困ったことがあったら1番に聞くような人です。 あんずさんは厳しいですね。ルールに則って、どんな時も裁定がブレない。TDによって優しさって違うんですよ。優しさっていうのは、アングルシュートの可能性がありつつも、プレイヤーをどれだけ信じるかっていう、ルールに載ってないところの最終的な決定ですね。僕も深夜はできるだけその裁定に寄せるようにしています。 あんずさんは歴も長いですね。10年くらいやってるんじゃないですか。花があるタイプでもないし、話題に上がるような感じじゃないんですけど、僕はすごい尊敬してるっていうと照れくさいけど、ちゃんと慕ってます。あんずさんがTDやるから出勤してもいいかなみたいな。

フロアで言うと、はちくんとリヴァくんですかね。はちくんは最初はヘルプで来てくれたディーラーだったんですけど、気づいたらTDとかやってます。なのでちょっとジェラシーを感じるところもあります(笑) 彼もすごく公平で、毅然とした態度で仕事ができる人です。それから柔軟な対応ができる人かな。責任感も強く一緒に仕事をしていて安心します。

リヴァくんはファミリーポットの店長ですね。TDでありながら、汚れ仕事とか雑務を自ら進んでするんですよね。ゴミの回収とか、設営とか。準備から撤収まで、プレイヤーからは多分見えないであろう仕事を率先して自分からやってる。多分これは僕含め他の誰にもできてないことだし、彼にしかできないことだなって。リスペクトしてます。 この間、ツイートしたんですけど、リヴァくんは40卓あるXPTの卓のネジを、スーツとベストを着たまま地べたに寝っ転がって外してたんですよ。ちょっとイカれてますよね(笑) すごいなって思います。僕には足りないものを彼は持っていると思っています。

海外でもよくプレイされるたいがさんから見て、日本の大会運営のレベル感を教えてください。

海外は確かに規模が大きいものを捌いていてすごいんですけど、実態はウェイティングが2時間あったり、エントリーしてからチップを受け取るまでに1時間並ぶとか、それが当たり前なんですよね。テーブルが10人MAXなのもよくあることだし、ディーラーのレベルも高いとは言えないですね。 だから、細かいところに目を向けても、日本の運営はすごく優秀だなと思います。日本で1万円とか3万円とか出して、あんなに上手なディーラーに撒いてもらえて、あんなに良いストラクチャーでプレイできて、ポーカーを遊ぶには恵まれた環境だなって思います。

フロアとしてプレイヤーに伝えたいこと


プレイヤーに伝えたいことはありますか?

日本はディーラーとフロアの格好が一緒で区別つけにくいとは思うのでなかなか難しいかもしれないですが、フロアスタッフにドリンクやゴミ捨てをお願いするのはやめて欲しいですかね。海外で同じことをすると、もしかしたら恥ずかしい行為に当たってしまうかもしれません。レストランで大きな声でフロアスタッフを呼ぶような感覚かな?僕はドリンクやゴミ捨てを頼まれても基本的には断るようにしています。理由としては全てに対応をできないという点ですね。正直、フロア業務中に全部対応してたら仕事にならないです。(笑)

あとは、タッグ戦の文化だとは思うんですけど、日本人は後ろでハンド見て応援する人が多いですね。友達のプレイを見て応援して、ってすごくいいことなんですけど、ハンドは共有しない。距離感を守る。通路も塞がない。この辺りをしてもらえると助かります。

あともうひとつ、なんかプレイ中に納得できないことがあったらSNSに書く前に直接言ってほしいです。その場のフロアの対応に納得できないなら、別のフロアを呼ぶなりTDを呼ぶなりしてほしい。SNSに書いてもそのことってもう鬱憤を晴らすことにしかならなくて解決しないと思います。できるだけその場で解決するように努めてほしいし、こちらもプレイヤー全員が納得できるようにしたいです。

今後の目標


たいがさん個人の今後の目標や展望を教えてください。

フロアとして大成しよう!みたいな目標は特になくて。ただ、仕事として声かけていただける以上は、呼ばれてるうちが花だと思って、全力で取り組みたいなと思っています。 プレイヤーとしては、キャッシュゲームをプレイしにもう少し頻繁に海外に行けたらいいかな。海外に行く頻度を増やして、プレイする回数を増やして、試行回数を増やして自分の実力を明らかにしていきたいなっていうところですかね。

名人戦について


宣伝したいことはありますか?

名人戦という大会の運営に携わらせてもらっています。僕はこの大会が日本で1番格式のある大会だと思っています。この大会に毎年運営として準備から関わっています。当日もディレクターとして現場に立てることをすごく誇りに思っていますし、大好きな大会です。

名人戦本戦は、生涯獲得賞金ランキングの日本人トップ100以内の人が出られるっていうトーナメントです。格式が高いということもあり敷居が高いと思われることも多いです。でも、名人戦期間にはその他のタイトル戦も10個以上あって、誰でも参加できるトーナメントも多い大会となっています。 全てのトーナメントが、「サイドイベント」ではなく「タイトル戦」として、平等に尊いトーナメントである、他にはないスタイルの大会だと思っています。是非皆さんにも、様々なタイトル戦に参加頂いて、名人戦のレベルの高さやその雰囲気を味わってもらいたい。タイトル戦で優勝した人は各タイトルの称号と名人戦本戦に出場する権利を得ることができます。それも一緒に目指してもらえたらなと思います。 年末名人戦で皆さんに会えるのを楽しみにしています。

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ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

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