poker picks logo

「センスは解像度の高さ」小原順/みさわ Part3

陽気な人柄で大人気なプロポーカープレイヤーみさわさんこと、小原順さん。プレイヤーだけではなく、大型大会での解説やコーチングなど幅広くご活躍されています。ポーカー戦略以外にもこれまでのご経歴や結婚観まで、根掘り葉掘り聞いてきました!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

「人気コーチングの内容」


みさわさんはコーチングをやっていることでもよく知られていると思いますが、みさわさんのコーチングについて少し教えてください!具体的にはどんなことをやるんでしょうか。

まず1回目にテストをやります。 GTO Wizardを使って、例えばプリフロップやポストフロップのシチュエーションで50問ずつやってください、とか。 あとはレンジの塗り絵とかをしてもらって、この状況でプリフロどのハンドだったら3bet返して、どのハンドコールして、どのハンドだったらおりますかみたいなレンジの塗り絵とかを最初の2時間か最初の1コマでやらせていただいて、その人の進捗を見て、個別にカリキュラムを組んでいく形ですね。ただ、ベースはやっぱりGTOベースのコーチングです。

2回目以降は何をされるんですか?

2回目以降は、初回の結果を元に、プリフロップの練習を続けます。宿題として毎日50問ずつ解いてもらい、それを次回確認して、問題点を削っていく形ですね。

それだとある意味似たプレーをする人が集まるのかなと思うんですけど、そこは個人によって「ベースはこの理論を習得したけど、あなたはこういうプレースタイルが合うよ。」みたいな差があったりするものなんでしょうか。

ポーカーにおいてプレースタイルなんて言葉はないっすね。 俺も昔はルースとかアグレとかインタビューで言ってたんですけど、結構今恥ずかしく見れないです。

プレースタイルという言葉はプレイヤーの間でよく口にされる単語ですよね?

最終的にポーカーってやっぱりGTOのところに行き着くんですよ。だからそのGTOを100%再現できるプレイヤー同士がやったらハンドゲーですよ。そんな人世界で1人もいないと思いますけど。もちろん全員似たプレースタイルになるんです。 そしてGTOプレイヤー同士が対戦すると、どちらかが均衡を崩したときにEVが下がり、GTOに忠実な方が勝つ可能性が高いことになるんですけど、結局そのGTOの理論をある程度習得して、そこから相手がどうずれているかっていうところに対してエクスプロイトをしていくところで、やっぱりセンスとか理解度の差が見えてくると思います。

だから言ってみたら、そのGTOのところにすごい近いプレイヤーを一旦作る。で、その上で、当然みんなこうでしょ、だからこれこうしときゃいいでしょみたいな話をこっちの経験から喋るみたいな感じですね。

習得度が高いもの同士の戦いの場合ってどこに隙が生まれるんでしょうか?

生まれないっすよね。GTO対GTOは。だから運がいい人が勝ちますよ。ハンドが入った方が勝ちです。だからもうラッキーした人間が勝つ。

ただ、 人間がGTOを完全再現するみたいなのって絶対に不可能なんですよね 。 例えば、俺がトーナメントめちゃくちゃ走って、 後でばーって全部見返したら、1個のトーナメントで多分50個ぐらいミスってるんですよ。

みさわさんでもそんなにミスしてるんですか…

でもよく聞くのが、 「いや、今回のトーナメント、ミスはなかったんだよね」みたいなこと結構言う人いるじゃないですか。いや、そんなわけねえだろって思ってるんですけどw 細かい0.01bbのEVロスとかも全部入れると、多分50個60個とか全然ミスってると思います。 だからそれが不可能で、尚且つ人間がGTOを再現するには根拠性が必要なんです。なぜこうなるのかって部分を言語化して教えてもらえれば、その時点で腑に落ちるんですよ。

「GTOベースのコーチじゃないと正直きついと思います。」


ちなみにコーチングをされている立場として、失敗しないコーチの見つけ方って何かあるんでしょうか。

これは無理っすね。っていうのも失敗しないコーチの見分け方みたいなのは、リテラシーが低い初心者には難しいと思います。

それはなんででしょうか。

トーナメントで実績残してる人にコーチをお願いしようかってなっても、トーナメントの実績なんて別にその時の上振れ下振れで実績なんて決まるものなので、ヘンドンモブで日本で上位10名の人が日本で10番以内に上手いかっつったら全然そんなことないんですよ。 だからやっぱりリテラシーに関しては無理じゃないって思いますけどね。なので、 それこそ口コミしかないんじゃないですか。

人に聞いたりして、なんかすごい良いらしいよってなってる人はそんなに悪いことはないと思います。その人やめといたら?って誰かが言ったらやめといた方がいいんじゃないですか。 あとはポーカー界隈はやっぱりXが多いんで、Xとかで調べてもいいんじゃないかと思います。 ただGTOベースのコーチじゃないと正直きついと思いますけどね。

そうなんですか?

だって絶対避けて通れないと思うんで。俺はこうやってきたみたいなのをずっと言っても、 それなんでですか?って聞いた時に言葉が詰まるコーチはダメじゃないですか。だから全部なんで?なんで?なんで?って聞けばいいと思います。 で、その答えを、もちろん均衡プレイの完全な理由を説明するのは無理なんですけど、数字を使って、ちゃんとした根拠性を持って自分なりの考えをわかりやすくスラスラ説明してくれるコーチだったらいいと思いますけど、 そうじゃなかったら1回目にやばいなって思ってすぐやめた方がいい気がしますね。

「解像度が高い人がいわゆるセンスのある人なんです。」


みさわさんはGTOのベースの理論と、人間としての損したくないっていう感情をどう掛け合わせてるんでしょうか?

「掛け合わせる」っていうのは、まずGTOがこうだよねって一旦提示して、それをベースに自分の中で予想を立てる感じですね。俺もGTOの再現率は全然低いと思ってるんで、その近似みたいな部分を自分なりに考えるわけですよ。それに対して、「人間ってこっちに寄りがちだよな」っていう部分が、経験によるものだと思うんです。 だから、数学的にデータを集めて解析することももちろんあるけど、MTTとかになると、ある程度人間の性質や癖みたいな部分を自分の中で理解して、それに基づいて判断するんですよ。

ここの解像度っていうところがいわゆるセンスって言われるところだと思います。 なので、GTOを全然知らないけどポーカートーナメントで勝ちまくる要領がいい人って、そこの「人間の行動パターン」に対する部分の解像度が高い人だと思います。 例えば、「人間のこのでかいリバーのオールインなんて、ブラフは本来の頻度よりも少ないだろうな」とか、「このハンドは本当はコールすべきだけど、人間の3BETは強いところの割合が多そうだからここは降りるべきだよな」って判断できる人がセンスのある人なんじゃないかと思いますけどね。

解像度の高さがセンスであるという言葉、グッときました!

まあ言ってみたら、大体はそもそも非GTOの相手やライブMTTだと思います。結局ライブMTTにおいては、相手が非GTOだったら、じゃあこっちも均衡から外れてマキシマムを取りに行った方がいいよねみたいな話になってくるんですよ。それが難しいんですけど笑

「初心者へのアドバイス」


みさわさんから初心者へのアドバイスって何かないでしょうか。

本気でポーカーを上手くなりたいと思ってるならポーカー歴が浅いうちにコーチつけた方がいいんじゃないですか。なので自分のところに来る生徒さんもポーカー始めて2ヶ月ですっていう人と、ポーカー始めて3年ですって人だと、俺はポーカー始めて2ヶ月の人を優先的に取りたいんですよ。

意外です。

というのも、もう基本的にポーカー始めて3年だと、巷で言われる間違った当たり前みたいなのが頭の中に入りすぎちゃっていて、 もうフォームが固まっちゃってるんですよね。しかも間違ったフォームが固まってると、まずそこにお湯をかけて溶かすところから始めなきゃいけないので、その作業がある分めんどくさいなって思います。

確かに。

なので、早いうちに、ポーカーってこういうもんだよねってところを勉強するんです。 例えばサイドボットがないオールイン勝負になって、1Allin 2Activeだったら絶対チェックで回そうねみたいなのって、日本での固まった常識になってるだけで、かなり思い込みすぎなんですよ。

最近は、これしない方がいいとかあれはしちゃいけないとか、固定概念が多いイメージはありますね。

そういうところの、「間違った常識」みたいなものを、アミューズメントスポットとかに行くと、歴が深い人が歴の浅い人に、 ばーって言ってるところとか俺も結構見るんで。 で、俺もその時にいやいやとはなかなか言いづらいじゃないですか。だからもし本人に聞かれたらさっきの俺はこう思うよ、みたいな俺なりのことは言ったりするんですけど。 だけどそれってそういうことがきっと起きてるんだろうなって思います。

そういう話はちょこちょこSNSで話題になりますよね。

ポーカーってGTOを勉強してうまくなる必要なんてないじゃないですか。 別にうまくなる方向性に行きたい人と、お酒飲んで楽しくポーカーしたい人と、 負けるのが好きな人だっているわけじゃないですか。変な話、もしかしたら1万人に1人くらい、すごいドMな人がいるかもしれない。俺、負けるのがすごい快感なんだよねみたいな人もいるかもしれなくて。 でも、その人のことを否定はしちゃダメじゃないですか。人それぞれの価値観があるんで。やっぱり自分の価値観をばーって押し付けてる人にはなりたくないかな、みたいなのはありますね。

「今後のみさわさん個人の目標」


今後のポーカーでの目標等があればぜひ教えてください!

目標は、やっぱりMTTのプレイヤーとして 第一戦で戦っていきたいですね、ずっと 。

トーナメントに出て、結果をある程度残してとか、そういう感じでしょうか?

そうですね。 ただ、結果を残すっていうのを目標にするのも、ちょっとやっぱり本質と外れちゃうんで。なので、ポーカーで 継続的に利益が出せるような知識をつけるっていうのが目的というか、目標ですかね。

最後に告知などがあったらぜひご紹介させてください!

そうですねー、GTO Wizardアンバサダーしてるんで、入ってくれたらありがたいです。 あと最後に伝えるなら、そうだな。 ポーカーはその人の楽しいが正解だと思うので。 自分がポーカーがうまくないからどうだとか、ポーカーうまいからどうだっていうことを考えるのって、すごく俺は愚かだと思う。 だから、自分の中の楽しさっていうのを見出して、そのために自分の中でうまくポーカーと付き合っていってくれればいいのかなと思いますね 。

Poker Picks

Poker Picks

ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

Obara Jun

小原順

EPTPrague2022Main4thなどプロとしての実績を持ち、国内では大会解説やコーチング事業を行う。持ち前の明るいキャラクターで誰からも愛される。

recommend