「ポーカーとNFTゲームの共通点」コインムスメ代表 辻拓也
みなさんこんにちは。海外のカジノでポーカーをすることにあこがれませんか?Amu先生はこの夏、Pacific Poker Clubの企画で3人のプレイヤーを連れてラスベガスに挑戦しました。今回は、ポカる君がそのラスベガス遠征の活動内容とライブポーカーで思考を組み立てるコツを聞いてくれました。海外に挑戦を考えている方もこの授業を参考にもっと強くなりましょう。それでは、着席!ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。
Amu先生、お久しぶりです!アメリカはどうでしたか?
久しぶりです。楽しかったですよ。 また行きたくなりました。
動画見ました!お話をもっと聞かせてください。
いいですよ。それじゃあ、今回はアメリカでのお話を中心に進めましょうか。
ラズベガスのポーカープレイヤーはどうでしたか?
5-10や10-20での話ですが、プリフロップをしっかりプレイされていて実力が反映される場所だと思いました。3bet potでのマルチウェイはほとんどないです。
強い役を作らないといけないケースもありましたが、ヘッズアップになることが多かった印象です。
へぇ~、海外でのポーカーだと基本マルチウェイになって絵合わせ大会が始まるイメージでした。
GTOに即した人はいましたか?
毎日プレイしているようなレギュラープレイヤーでもGTOに完全に即した人はほとんどいなかった印象でした。
ただ、レギュラープレイヤーも勝つために独自の戦略を構築していました。
今回は4人の精鋭隊で挑まれたんですよね?
どのような基準で選定されたのですか?
大まかにはこうです。
①勝てると思われるくらい上手な人 ②まとまった時間を確保できる人 ③ステーキングに興味がある人
なるほど、僕も可能性があるということですね!
実力でポカる君はまだまだですかね
え、そうかぁ~。
若い人を取り入れているのはやっぱ次世代のポーカープレイヤーを育てるためですか?
そうですね、若い層を育てるために選びました。笑
すごい!
(実際は上の基準で集めたけど、結果的に若い層育てることに繋がったな...)
1日のルーティンについて教えてください
それであれば、Amu精鋭隊のひとりであるKarさんの note が非常にわかりやすいです。
Karさんのnoteはこちら:ラスベガス遠征振り返り2024|kar (note.com)
遠征の前半は3~4時間かけて全員のハンドレビューをしていました。朝~昼カジノへ行き、6~8時間稼働。帰宅してハンドレビューの流れです。
全員の!?どうやってハンドレビューをしていたんですか?
ハンドはステーキングされたお金の管理の意味も兼ねてすべてdiscordで管理していました。
最初の頃は、投稿されたハンドを上から全て見ていきました。
ハンドレビューはやはりGTO Wizardを使用しましたか?
いや、Wizardは2回くらい開いただけで、原始的な考え方が多かったと思います。何回バリューを打てるかとかそういうことを検討していました。チェックしたら弱そうに見えるかなとか。
GTOに理解がある方々が遠征されていたのでGTOベースでレビューしているのかと思っていました。
GTO Wizardを使わなかったのもそもそも今回の参加者に均衡理解があるからですね。なので、均衡戦略を検討する時間を省くことが出来たと思います。
個人でハンド振り返りをするときはどのようにされていたのですか?手順について教えてください。
ハンドの振り返りをするとき、改善点は言われないと気付かないことが多いので個人で振り返るのは難しいです。ただ、もし個人で気になったハンドの振り返りをやるなら以下のやり方がいいと思います。
まず、プレイ中に自分の中で選択肢にあがっていたアクションを全て挙げておきます。 例えば、フロップのボードを見て「33%ベットか75%ベットの2つを候補にした」や「33%ベットかチェックを候補にした」などといった形ですね。 アクションに選択肢を挙げたなら、なぜそれを選択肢として挙げたのか、その理由をメモなどを用いて思考をアウトプットします。
そのあとにGTO Wizardを確認します。 ここで、選択肢として挙がらなかったにも関わらずWizardの均衡戦略では採用されている選択肢があったら、その戦略を取り入れます。このとき、なぜそれが浮かばなかったのか、なぜそれがWizardで採用しているのかをよく復習するとよいです。
もし、均衡戦略と挙げた選択肢が一致していたら、その選択肢を選択した理由が合っていそうか、相手の戦略をみて考察しましょう。
お互いの戦略をチェックして、この理由まで精査できるようになると高いレベルになっているといえます。
Wizard見るだけで終わってた!
一人で振り返るのは非常に大変なんですね。
ライブポーカーの環境では、均衡上はEVがそこまで高くなく選択肢に入っていないアクションが、実際にはEVが高いというものも存在します。
それを思いつかないことが精鋭隊メンバーも多くあり、ハンドレビューのときに指摘することがありました。
例えば、チェックか大きいベットの二択が均衡の混合戦略としてあって、相手がタフコーラーだから大きいベットを選択するとかですか?
いいえ、それではエクスプロイトの粒度が荒いです。
ポカる君は今、「相手がタフコーラーだから」という雑な粒度に縋ってアクションを決めましたよね?
え!?はい。
タフコーラーって言っても大体は別のところですごいキャッチが出てきただけで決めつけていることが多いです。
たしかに、そうやって決めつけることが多いかも!
本当ならもっと細かい解釈が必要で「どのハンドが、どういう状況で、いつ出てきたからこう考えているプレイヤーと想定し、今回こうすると思った」まで踏み込む必要があります。
ラズベガスであったハンドで印象的なものがあれば教えてください。
ラスベガスで印象的なハンドでいえばXに投稿した1ハンドです
図にするとこんな感じです。
ヘッズアップ (vs レギュラー)
BTN(Amu) レイズ 3BB(A5o)
BB(Villain) コール
Flop A74 モノトーン
BB check
BTN ベット 2BB
BB レイズ 10.5BB
BTN コール 10.5BB
ターン A
BB チェック
BTN チェック
リバー 8
BB ベット 75BB
BTN オールイン 150BB
BB フォールド(J9sのフラッシュをshow)
これはブラフですか?
そうです。それでは、思考の練習として、ポカる君はこのハンドがどういう考えのもとに、お互いがどうプレイしていて、かつ、このプレイはどういうプレイに対して利益的になっているか考えてみてください。
え!うーん...すぐには答えが出なさそう。宿題でもいいですか?
もちろんです。
みなさんもAmu先生のアクションについてどういう考えのもとに、お互いがどうプレイしていて、かつ、このプレイはどういうプレイに対して利益的になっているか考えてみてください。
もし、チームで海外にいくとしたら、チームではどのような議論をしたらいいか教えてください。
前提として、全員が同卓者のプレイヤーメモを取ることが大切です。
ただし、先ほども言った通り、リーク想定をするときにタフコーラーやパッシブなど1単語で表現しないほうがよいので注意してください。
「こう考えているプレイヤーだと想定したから今回こうアクションすると思った。」など"どういう観点からどういう要素を考慮したか"を共有しましょう。
キャッシュプレイヤー期間を過ごす身としてモチベーション維持において意識していたことはありますか?
自分は強いという自信が大事だと思います。下ぶれてもプレイが歪まないようにするためには自信を持っていることが不可欠です。
例えば大きなポットを失ったときになにか間違えたかなと振り返るのはティルトの原因になります。もし、自分のアクションが下手だと思ったら個人で振り返るのではなく、うまいと思う人に聞くのが一番です。
それから、初歩的ですが、降り続けることをやめないこと。
みんなが間違えるのは結構勝っていそうだが、ギリギリ期待値に合わなそうな判断です。ライブポーカーだとハンドが入らず長時間待つことも多いのでやっと来たハンドだからということでコールなどをしてしまう場合もあると思いますが、いくら待ったかは、期待値に関係ないので期待値に合わなかったら降りることが大切です。かなり際どいジャッジだと今も思いますが、僕も今回の遠征でKKを降りた局面がありました。下の解説動画を見てみてください。
Amuさんの動画はこちらの12分36秒ごろから!!
思考の過程としてGTOベースでの考え方、アジャスト観点での考え方などあると思いますけど、優先度や比重はどうされていましたか?
ポカる君、今日は質問が鋭いですね。
プレイをする際であれば100%アジャストを優先します。これは対戦相手がGTOから乖離しているからなどではなく、たとえ、GTOを理解している対戦相手でも、常にアジャスト考えます。
ただし、アジャストする上で何もない状態での思考の過程は大変難しいです。なので、GTO戦略を基盤としてアジャストを考えます。
たとえば、KK5ってボードが落ちて、あなたが7ハイ持っていたとします。
このときに安いCBで相手のAハイがフォールドするということが明らかであればベットしたいと思います。
これは、GTO戦略を頭の中で考えたとき、相手のAハイの期待値がコールとフォールドで等しく、混合戦略になっているという知識があるからこの結論になるわけです。
稀に例外はありますが、ほとんどのケースでGTO戦略を基盤としてアジャストを行います。
前の授業でもアジャストはGTOを学ばないとできないと話されていましたよね
しっかり覚えていますね。本当に今日は優秀だ。
へへーん!!
では少し踏み込んだ話を...。 よくあるのが、タフスポットのときだけエクスプロイトを考える人がいます。普段は均衡戦略を模倣したプレイをしていながら、大きなベットに直面したときなどにアジャストを考えるというケースですね。
ヴッ!!
ポカる君に刺さってしまいましたね。さっきまでの調子はどこへやら...。
続けますね。
エクスプロイトは相手の戦略全体を想定してEV見積もりをしていくものです。
相手のアクションを見て「バリューしかない」などと読むだけでなく、フロップでベットするしない、ベットサイズをどうするかといったところもエクスプロイトです。
タフスポットに直面してからではなく、もっと前、アクションがどのように変化するかを考えることがアジャストにおいて大切です。
今回のアメリカ遠征動画における1ハンドでもベットサイズに関するエクスプロイト検討をまとめています。もしよかったら視聴してみてください。
わかりました。見てみますね。
Amuさんの動画はこちらの4分55秒ごろから!!
そういえば先生、遠征中にXでポーカーの用語でわからない単語がありました。教えてもらってもいいですか?
いいですよ。どちらですか?
えっと...Polarレンジ、Indifferent、Nodelock、Urgencyっていう4つなんですけど
Polar(二極化)レンジというのは強いバリューハンドと弱いブラフハンドの二つで構成されているレンジということです。このようなすごく強いか完全にブラフかのレンジでアクションをしている状態の人に「この人はPolarレンジを持ってプレイしている」と言ったりします。
Indifferentは、2つ以上のアクションのEVが等しいような状態を指します。先ほど話したPolarレンジで強いハンドも弱いハンドもバランスよく打たれたときのブラフキャッチハンドなんかがいい例ですね。コールしてもフォールドしてもEVが一緒になる状態は、コールとフォールドのIndifferentと呼んだりします。
Nodelockというのは、パソコンのソルバーツールを用いるときに使う機能のことを言います。ソルバーツールで自分の戦略を調べるときにその戦略は動かさないという約束の上で均衡を計算をさせるときにNodelockという機能を使います。
Urgencyとは、現状は強いけど、後のカードを見るとでその強さが低下しやすくカードが落ちる前に今の強さでアクションを行いたい状態をUrgencyと言います。例えば、TハイボードのJJなどがUrgencyが高いと状態と言えます。一般的にUrgencyが高いとよりアグレッシブなアクションを取ることが多いです。
ありがとうございます。また一つ賢くなれました。
先生、僕も今回のお話を聞いて、海外に行きたくなりました。最後に海外でキャッシュ遠征に行くときにアドバイスがあれば教えてください。
海外に本腰入れて打つならですが、分散理解をした方がよいと思います。ライブポーカーでは一か月頑張って打ったとしても5,000ハンド程度が限界です。このハンド数であれば分散で結果はどちらにも転びます。裏を返せば1か月続けて打っても偶然で勝ってしまうこともあるということです。なので、勝っていても勘違いせずに続けることが大切です。
それから、ライブポーカーで同卓している人はそれぞれ戦略や傾向が違うのでフィールドをエクスプロイトをするのは辞めたほうがよいです。ひとりひとりとにかく解析粒度を細かくして、自分の戦略を構築することが大切です。
ポカる君も丁寧に分析して戦略を構築していってください。
はい!わかりました!ありがとうございます!
今回のアメリカ遠征はPacific Poker Clubの支援のもと行われました。
ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。
GTO Wizard Japan Official Coachとして、NoteやTwitterなどを中心にポーカーの理論の研究と発信し、GTO理論の国内普及に貢献する