poker picks logo

「上達の秘訣は取捨選択」プロプレイヤー負野智光 Part2

長年海外でキャッシュプロとして活躍する負野智光さん。さまざまな業界を経験してきた負野さんが語る、ミックスゲームの魅力やキャッシュゲームにこだわる理由について差し迫ります。ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。

「日本全体のポーカーレベルを上げるには」


日本全体のポーカーレベルを上げるには、どのようなことが大切だと思いますか?

やっぱりお金を賭けれるか賭けれないかが大きいと思います。

それはなぜですか?

ポーカーしたらお金が稼げるってなったら、賭けずにポーカーってします?

しなくなりそうですね…。

そうなんです。なんかしなくないですか。だって時間っていう、人生にとって最も限られたリソースを使うわけですよ。 で、それで同じ時間を使ってお金を稼げるか稼げないか。法が許すならば、稼げる方にしません?

もちろん稼げる方がいいです!

今みたいにかなり逆風になってきて、オンラインポーカーしてますって堂々と言えなくなってしまったから言わないけど、昔は本当に別に気にしないっていう風潮でした。昔は子供をスクーターの前乗せて2人でおっちゃんが乗せてたわけですよ。僕、前乗ってた人間やからね(笑)ギリ許される、みたいな。

時代が変わってきていますね。

そうです。じゃあアミューズってどういうところですか? 強い人間は行かない。じゃあ学ぶことがない。なんだったらポーカーっていうのは、答えがわかりにくいゲームです。 そこで間違ったことを教えたがる人間がいっぱい現れます。今なんかアミュおじって言葉で表現されますが。

最近よくSNSで見かける言葉ですね...

僕ね、ビリヤード業界、ダーツ業界、ポーカー業界ってこう転々としてきて、 全ての業界でおっさんっていう生き物がいるわけです。 おっさんって何がしたいのかなと思ったら、教えたいみたい。 若い子とか女の子に教えたいんですよ、あの生き物って。僕もおっさんなんで同族なんですけども(笑)彼らはうまくなりたいとかじゃなくて、うまいとかすごいって思われたいんですよね。なぜかというと、すごくないから。

思い当たる節もあります…

すごい人はすごくなるから、みんなにすごいと思われるんですよ。 でも、すごくないから、どうなりたいか。 その次、すごいと思われたいっていう下位互換が出てくるんですよ 。だから、初心者とか何もわかってない人間に教えて、すごいと思われたいんですよ。全種目にいるおっさんという生き物がそうです。これがアミュおじなんでしょうね、この業界の。

なるほど。

たまにね、俺の前で教えてて、間違ってないっすよねって僕に相槌を求めたりすんねんけど。すごいメンタルやな自分、って思います(笑)内容は大体間違ってるんで。 だから変なことを覚えちゃう初心者さんってよくいます。例えばアミューズに1回行きました。2年後に行ったらレベル下がってる時までありますから。 これはうまい人がどんどん抜けていくからですね。

下がることもあるんですね。

だって、上手い人は行かなくなるわけですよ。レベルも低いし、何の勉強にもならへんし、お金にもならないし。 そして、下手な人が初心者に教える。それ、いい方向に行くのかな?こうこうやった方がいい、絶対こうやってこうやって、俺はうまなってきてん、って間違った情報をシェアし続けるんですよ。

例えばポーカー10年やってる人がいます。 でもずっと間違ってる人って多分僕がポーカー始めて1週間の方が上手いんですよ。 僕、初めから上手くなる方向にほんの少しずつ、1歩ずつ進んでいったんですよ。でも、スタートから逆方向に走り続けてる人って、多分僕が始めた1日目の方がうまいですよ。 僕は0点だけど、その人はマイナス50点なんで。 ただ、僕はまだ経験がないから、こういう時って負けてそうっていう経験は向こうの方が上ですね。

確かに進む方向性を見極めることってすごく大事ですね。

そう。そしてこれは、僕っていうポーカーが強くなるセンスがある人間がそう思ったんですよね。でも、 ポーカーうまくなるセンスが僕より少ない人は、その下手な人のことを信じちゃうわけですよ 。そうなると、全員逆方向向いてるみたいなアミューズメントカジノも出てきます。 もうこの店の人すごい、全員どんどん下手になっていってるっていうお店も極論で言うとあるんですよね。

「大切なのは取捨選択」


進む方向に気をつけつつ、どう勉強すれば伸びますか?

ポーカー、何で勉強しても伸びますよ。 ただ、 方向逆のもんに引っかかったらダメだよ っていう。僕がみんなに言うのはね、 本当に話半分で聞け って言ったんですよ。教えたがりさんとかいるんで。 で、それを取捨選択するのはその人の能力なんです。 うまくできない人はやっぱり強くならないわけですよね。 ただ本当にわかりにくいゲームなのがポーカーの難しいところです。 うまぶってる人がすごくうまく見えるし、世間も多数派の意見に流れていきますから。

先ほどの方向性の話ってことですね。

ポーカーって、自分より強い人のことはレベリングできません。そして逆に自分より弱い人のことは完璧にレベリングができます。 例えば、僕のレベルが10だとします。あいつ6だな。4だな。3だな。1だな。 ポーカーっていうのは、 その相手がやってること、相手の思考をトレースして、その人が考えてる1個だけ上のことをやってあげるのが最強の戦術になるんです。

高いレベルのことをやり続けることが最大ではないんですよ。 最高ではあるけども。つまり、 利益を最大化するのは、相手のレベルをちゃんとレベリングして、その人が考えている1個だけ裏をついてあげること。 これは絶対的な真理だと思うんですよね。 だから、いろんな間違ったこと聞いても、レベリングしっかりするのは重要なことなんだけど、最近AIが出て答えが出ちゃったから、取捨選択しなくてもよくなりました。じゃあ、それを学ぶのはもうもちろん絶対プラスなわけですよ。 その間違ってない実践の経験を持ってる僕たちプロのアドバイスを聞けたら、またそこもぴゅっと伸びるし。

なるほど…すごく勉強になります

だから本当に 取捨選択 。 取捨選択することがほんとに上手くなるためのめちゃめちゃ大事なことなんですよ。あかん、この言ってる人絶対嘘ばっかりやん。とか、いやこんな無能な人がポーカー強いわけがないとかいう見る目。 その人ニセモンだ!ってわからなかったぐらい能力が低い時点で、もうポーカーが強くなれることはないです。間違った宗教に入っちゃったみたいな感じかな。 間違ったことを教わったら、それが間違ってるなって見抜ける能力があるかどうかがポーカーではまず大事。

そう。 どれだけ信頼できる人でも話半分に聞く。 例えば、今日めっちゃいいこと教えてもらった、でも半分で覚えとこ。すると、次の日、別の人が違うことを言った。 もし最初の人のことを100%頭に入れていたら、次の人は間違ったことを言ってるからこいつは偽物?となってしまいます。 でも、もし話半分にしていたら?次の人のことを聞いた。あれ、この人の言ってること、前聞いた人とは違うことを言ってるな。こっちの人の方が合ってるかもしれない。この人の言うことも話半分で聞いておこう。 って感じで、自分の中で多数決ができていくんじゃないですかね。

で、やっぱり微差はあれど、ほんまに強い人たちが逆方向の言うことを言うことなんか絶対にない。 だってみんな同じ方向に進んでるから。 僕がたまに聞くちょっと微妙だなっていう言葉で、100人いたら100通りうまくなり方っていうのがあるんですけど。 ないです。 99個間違ってやったことを潰してきて、王道があります。 セオリーってあるんですよ。 セオリーへの向かい方が100方向あるかもしれんけど 、ここに向かいたいんですよ。

「警鐘を鳴らしたいこと」


負野さんはコーチングについて思ってらっしゃることがあるとか。

僕はそんなに精力的じゃないですけど、コーチングすることもあります。 もう一言、言いたい。僕で最終ライン、このラインより弱い人はそんなに人に教えない方がいいと思っています。

そうなんですか!

今ポーカー流行ってきてるからこそ、こう、変な詐欺師みたいなのが増えてるわけですよ。最近コーチングとかも結構えげつなくて、 詐欺師、詐欺サイト、詐欺学校とか蔓延してますよ。えげつない。

確かにコーチングっていうワードはよく見かけますよね。

なぜ人にコーチングするか。人に教えてみるっていうのも実は1つのいい勉強ではあるんですよ。 だから、コーチングをしたことない人、ティーチングをしたことない人がやってみるっていうのが一つあるんですけれども、それ以外の目的で言うと、やっぱり金銭目的になると思うんですよ。

そうですね。

例えば3,000円でコーチングします。え。ポーカーした方が稼げるんですけど。違和感ないですか?5,000円になります。いや、ポーカー強い人はもっと1時間で稼ぎます。おかしくないですか?

言われてみると、コーチングって相手のことも考えなきゃいけないし大変ですよね…

教えるメリットも最初はあるかもしれん。コーチングを通して言語化する。でも、もう十分言語化した。聞いてくる質問も、レベル帯も大体一緒だ。教えることも一緒だ。じゃあ、こういうことを教えたらこの人たちはうまくなるんだ。 ティーチングやコーチング。ティーチャー、コーチとしての経験値はもう溜まった。じゃあ、最後は別にもう金銭面だけですよね。じゃあ自分の時給に近い額とか、 僕は本当はポーカーの自分の時給より高い額が欲しい。なぜかというと、僕らには移動時間もあるし、その人のことを考える時間もある。

そして僕があんまり最近コーチングを精力的に受けてない理由の1つが、 うまくならない人はいる。僕が教えても。 そしてうまくならない人を教えているっていうのは恥であると僕は考えています。 僕は一般的に考える習い事よりも高いお金をとっているので、コーチにはその人を強くしなければならないという義務が生じると思います。それを全うできていない。それは僕は恥やと考えます。だから、一般的に考えたら高いお金をとってコーチングをすることが、それほど自分でやりたいと思わなくなってきてるのは、そういうとこなんですよね。

確かに何事にもある程度センスは求められますよね。

コーチングは神の代物とかではないんです。 その人がいつか行ける場所までの速度を速めていくだけの仕事なんですよ 。 多分、その人のポテンシャルを超えられません。 例えばボイトレに行く。僕の限界までの声量、音域までを 鍛えてくれるでしょう。でも、僕がブルーノマーズの声が出るかとか、アリアナグランデの声が出るか。出ねえよ。

このセンスとか遺伝を伸ばす、トレーニングで早めてくれるのがコーチなわけです。 だから、はなからもうえげつなく低いレベルで天井まで行って頭打ちになってる人に僕がコーチングしても伸びないんですよ。なんかそういう人を教えるのが僕は辛くて。 知り合いとかね、あ、この人絶対伸びる。わかってる。今弱いだけで絶対伸びる。っていう人とかだと教えがいがあります。 義務を全うしてるコーチとして優秀だと思われ嬉しいですよね。

「コーチングの見極め」


コーチングって正直言ったもん勝ちなところはありますよね。

自称だけど僕と同じ仕事って言いよるわけですよ、そいつらは。 で、そいつらが詐欺的なことをしてる奴らもいるわけですよ。貶められてません?

そうなんですか?

ポーカープロで表出てる人めっちゃ少ないんですよ。 ってことは、ほんまに強いプロって表出てきてない。もしくはほんまに強いプロもなんかふわっと 気まぐれで表出てきたり、単純にスター性があって表出てきたり、元々知名度が高すぎて表にいたりっていう人ももちろんいます。

なるほど。確かに言われてみればそうかもしれません。

ただ、自称プロはなんぼでも言えるわけですよ。トナメなんて誰でも優勝できるんで、1個優勝したらそれでプロって言って。 で、ほんまか嘘かわからんような人を集めて、情弱ビジネスがいっぱいできるわけですよ、今このご時世。 一言で言うと、 腹立つねん 。

しかもね、これね、たち悪いのがね、両面あるんですよ。 本当に頭が悪くて理解が低すぎるだけで、 詐欺やと思ってやってないパターンの人もいるし。で、一生負けてるのに、自分のことを強いって勘違いしてる人もいるし。明確に詐欺だとわかってて詐欺をしてる人もいます。 だからね、わかんないんですよね。嘘発見機通してもわかんない人もいると思います。だからもう一度言うけど、僕がボーダーラインなんです。

「300点満点のポーカー戦闘力」


ポーカーが強くなるのに必要な要素ってありますか?

詳しく教えてください!

まず1つ目は、数学に基づく論理的思考力。ここが100点満点。これはオッズの計算とか、そのままの意味です。

2つ目は対人ゲームの強さです。 少し言い方を変えると、 ここは空気が読めるかっていうとこに結構近い と思います。 例えば僕は18年間ずっと水商売を経営してたんですね。そうすると、この人暇そうだなとか、この人はあの人のこと嫌いそうだなとか、この人いつもブラフばっかりだなとか、こういうことが結構わかる仕事をしたわけですよ。むしろ、分からなければできない仕事をしていました。 だから、その対人ゲームって、特にポーカーみたいなゼロサムゲーム。誰かが損をすれば誰かが得するゲームって、周りが見えるかが重要なんです。 つまり、意地悪をするっていう意味ではないんですけども、相手が嫌がるプレーをする人が得をするんですよ。

なるほど!

これって、相手のことがわかってることがすごく大事じゃないですか。例えば、お客さんの顔を見た瞬間、この人ってブラファーだよねって思えるかどうかです。 人って30超えたらもうそんなに人相変わらないです。それまで生きてきたことがやっぱりもう植えつけられてる顔をしている。 座った瞬間に服装とか顔つきでその人たちの 知能や性 格が大体僕たちはわかります。やっぱり、数字だけで答えが出る部分と、雰囲気で答えが出る部分、全然濃度が違うんですよ。

この人はどのぐらいの参加をしていた。オンラインとかならそれでわかると思うんですけど、面と向かって、例えば目を合わせてたのか。どこで目を逸らしたのか。どこでそわそわし出したのか。いつ自分のチップに目をやったのかとかってすごく情報量溢れ出てるんですよ。 それをどのぐらいまで見れるかっていうのがその対人ゲームの強さ。 対人ゲームの本質を理解してるかっていうとこに、ここも100点満点。

ライブならではのポイントですね。

そして3つ目にメンタル。メンタルの崩れなさ。 この3つの300点満点で、僕はその人の戦闘力、ポーカーに対する能力が決まると思ってたんですけども、 ちょっと今AIの発展により、僕は1つ目の数学に基づく論理的思考力、ここだけ110点満点になったかなっていう気はします。 例えば、数学に基づく論理的思考力が高いタイプ。昔は東大卒、京大卒の理系の人にかなり多かったですが。 でも、全くもって空気が読めなくて僕より弱い東大生、京大生は死ぬほどいました。

ただ、AIの発展でここが110点になったことにより、2つ目の能力のビハインドが抑えられるぐらいになりました。 僕の自己採点では、僕は1つ目の論理力は元々100点中85点ぐらいだった。 で、対人ゲームへの能力が90点ぐらい。メンタルは95点ぐらいっていう自己採点だった。だから僕は270点くらい。 そうそう、これ俺たまに90、95、100って言う時もあるから、 285とこんがらがる(笑)今ちょっと謙遜バージョンを使ったから270点。

はいw

でも今、数学的論理力が110点満点になった。この内50点ってのは、 GTOを学ぶことです。 僕は単純な算数力では、元々100点中かなりあります。算数力が70点、数学力が15点ぐらいやったと思う。僕は算数力は絶対満点です。これは多分全プロから認めてもらえると思う。 数学力が30点中15点ぐらいです。数学は全然得意じゃなくて。無理やり勉強されたくらい。ここから、GTOっていうのが今は多分入りました。僕はここが0点です。ほとんど勉強していない。贔屓目に見ても10点ぐらいしか僕は多分わかってない。 つまり110点中、僕はビハインドができたんです。そりゃ抜かれていくよねっていう。

「AIのポーカー界変動」


AIがポーカー界を大きく変えたと言うことですね。

そう。もちろんセオリーを超えるようなすごいプレーを生み出す人、こういう天才がこの世にはいるかもしれない。大谷翔平がいるかもしれない。ポーカー界でそういう天才現れるのか。どう思います?

いたと思います。

そうです。今まで、現れたことがありました。 それが今までの天才たちです。自分で、みんなが届かなかった戦術を編み出したとか。 ただこれ以降、ポーカーのそういうクリエイティブなプレイをする天才っていうのは現れません。 なぜかというと、AIによる100点が決まったから。

これは今までの、不完全情報ゲーム、完全情報ゲーム、多々ありますけども、全て抜かされてきてます。 絶対にPCには勝てません。 期待値のゲームなんで、 期待値がずっと向こうなんですよ。 じゃあ、人間の強さを測る方法。それはどれだけPCに近いアクションができるか。AIに近い保証ができるか なんです。

新しい戦い方ですね。

AIと全く同じプレー、期待値のマイナスが0のプレーをすることが高いレベルでは結局1番良くなります。 もし全員が強かったら、 GTOの再現度が一番高い人が人類で一番強くなると思います 。 ただ僕らみたいな低いフィールドやったら、相手のミスにどれだけつけ込めたかっていう人が時給が高くなるので、ここは違いますね。

対人ゲームの強さもやはり大事と言うことですよね。

そう。 だから最も強いのは、AIに最も近いGTOを極めて、そして相手がどれだけ乖離してるかもわかって、そして最もつけ込めるようになった人。 これは僕の上位互換であり、AIだけを勉強して人の気持ちがわからない人の上位互換である。 こっちがKQ、僕がAQ、そしてその最高の人がAKっていう状況になりますよね。完全にドミってる人が最強なわけですよ。 先ほども挙げたようにGTOの理解度、再現度が一番高い人が人類で一番強くなっていく時代になっていくでしょう

Poker Picks

Poker Picks

ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。

Ono Tomomitsu

負野智光

プロプレイヤーとして世界各地に飛び回り、国内では大会解説やコーチングを行う。YouTube「オーノ塾」などを通じてプレイヤーの育成貢献に努める

recommend