「ポーカーとNFTゲームの共通点」コインムスメ代表 辻拓也
今回、広島で開催のポーカートーナメントXPTの主催者であるSeijiさんに地方で大会をやる意義について伺いました。誰も大型大会をやったことのない地での挑戦やその苦悩、達成感とはいかに。ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。
なぜXPTを開催するに至ったのでしょうか?Seijiさん自身イベント興行自体初めてで、広島での前例がない中での大きな挑戦だったと思いますが、きっかけを教えてください。
僕はポーカーが好きすぎて、全国で行われるポーカーイベントに行ける限り行っていたんです。その面白さを周りの人たちに伝えたかったのですが、やはり仕事で行けない人や遠方すぎて行けない人が多くて。
そんな中、僕が県外イベントでそれなりな結果を残すようになったんです。それで、広島に帰った時にみんなに祝福してもらったり。自分自身もポーカー頑張っててよかったなと思う瞬間が増えました。改めてみんなにもっとこの嬉しさや楽しさを共有したい思いが強くなりました。広島でポーカーしてる時ってそんな風に褒めてもらえる機会が少ないんです。みんな同じメンバーでずっとやってて新鮮さや刺激がないからです。
イベントの面白さ、上手なプレイヤー達と戦う面白さを知ってほしいなって思った時に、近場で大会をやるしかないなって。やっぱりポーカーという遊びに人生をオールインするんだったら、自分だけではなく、自分の周りに楽しさを与えられる人間になりたいと思ったのが、イベントをやってみようと思ったきっかけですね。
そう思ったのは何年前ですか。
もっと刺激的なことを与えられないのかなって思ったのは3年前ですかね。構想を練って実際に着手し始めたのは2年前です。
ちょうど第1回の1年前ぐらいですね!
そうですね。実は最初のXPTって2年前にPetitDemonという広島の大きなお店をお借りして開催したんです。ゲストとしてシバターさんやエンペラーさんに来ていただいて盛り上げていただきました。その時に、これよりも大きな規模で開催してもっと全国からプレイヤーを集めてみたいと思いました。
XPTの名前の由来を教えてください。
ただのポーカーイベントではなく、いろんなエンタメとコラボしたり、いろんな側面からポーカーの楽しさを知ってもらうようにするイベントにしたかったので、どんどん掛け合わせていくというイメージのX。クロスXさせていこうぜっていうポーカーイベントですね。
1年前に開催した大型のXPT第1回大会において難しかった点とそれをどう乗り越えたかを教えてください。
初めてだったので、本当に全てが難所でした。
例えば、チップを作るところからもう難所なんですよね。店舗だと2,000枚あれば足りると思うんですけど、イベントとなると何万枚もいるわけで。作ること自体は簡単だけど、どの業者に頼めば安いのか、質がいいのか、納期が間に合うのか、求めている条件を叶えてくれるかどうかわからない中、時間もなくて。
僕の周りに1人か2人でもイベンターの方がいればまた別でしたが、全員素人なので効率の良い連携をとることができなかったのが、最大の難所だったかもしれないです。
周りの人のおかげで乗り越えれたなという感覚があります。第一線で活躍されてるプレイヤー、イベンターの方、配信とかテーブルとかそういったことを諸々第一線で引っ張っていってる方たちに、とにかく支えてもらった第1回でした。
警察との交渉はどうでしたか。
大変でした。
まず開催が決まった3、4か月前にすぐ警察に行きました。その時は、「なるほど、そういうことね。」という感じだったので、結構理解してくれるんだと思ったんです。それから何度か電話でやりとりをしましたが、大会の4日前に「SNSを見たんですけど、XPTのこれダメでしょ。」と言われて、それからずっと話し合いが続きました。大会の前日に、会場で警察と話し合いをして、一緒に視察して、最終的に了承をいただきました。
開催するにあたって、いろんな方から応援、協賛をしていただきその中からプライズを提供させてもらうのですが、金額も金額なので、正当に証明しなければ認めてくれないということもありました。
そういう細かい調整もあって開催ができたのですね!
XPTの運営チームの団結力があったからこそ乗り越えられたエピソードはありますか。
いや、団結力はないですよ(笑)
ないんですか!
できない部分の補い合い、この人が困ってるから僕がこれをしてあげようっていうのが団結力だと思っていますが、僕含めてみんな自分がやっていることにいっぱいいっぱいでした。だから、仲はいいけど団結力はあんまりないですよ。
臨機応変に対応できる人間が少ないから、それを予想してタスクを振る。だから団結力がもっとあればもっとラフに仕事を振れたと思います。多分なんとかなるだろうで(笑)
正直XPTの第1回目の時、どんな心境だったか教えてください。
不安しかありませんでした。
おそらく多くの方が思うイベンター側の不安って「お客さんが来なかったらどうしよう」「赤字になったらどうしよう。」という不安を想像されると思うのですが、そんなことはゼロに近くて、「お客さんが楽しんでくれなかったらどうしよう」という不安、あとはサポートとして来てくれたスタッフ達から「なんだこのイベント」「なんだこの運営」と思われたらどうしようという不安がありました。
普通はお客さんであるプレイヤーの満足度を優先するべきなのかもしれませんが実は僕はXPTの仲間に「ディーラーさん、スタッフさん、ゲストさんを1番にもてなせ」としきりに伝えてきました。
それには僕なりの考え方があって。
今までいろんなイベントに行かせてもらいましたが、ディーラーやスタッフたちの態度やその人たちが陰で愚痴を言っているのを見ることが多々ありました。その雰囲気のせいかなんだか面白くなかったなと思ったことがあるんです。
例えば、ディーラーがミスをしてしまった時でも、モチベーション高く素晴らしい環境で仕事をしていれば、きちんと心から謝れるだろうし、プレイヤーもそれ以上気を悪くしなくて済む。ですがもしモチベーションが低く、不満たっぷりな状態で仕事をこなしていた場合、人間ですのでそれが少し態度に出てしまうし、それを見た周りのプレイヤーは友達に伝えていき、最悪なケースは大袈裟にXに書かれたりして炎上することもある。僕はこれは連鎖的なことだと思っています。
最終的にプレイヤーに満足してもらわないといけません。しかしその為にもまず尊重しなきゃいけないのはXPTのために来てくれた協力者の方たちだと思っていて、こちら側ができる最大限の還元をしようと心がけていました。運営のみんなも、僕が言ったことを理解してくれて、すごく丁寧にスタッフやゲストと接してくれました。その甲斐もあってかXPTに関わってくれた人たちが「次回も行きたいです!」と言ってくださり、僕らのことを高く評価してくれました。
プレイヤーも、トーナメントの内容に関して批判しようと思ったらいくらでもできるだろうけど、それが目立たなかったのは、XPTを盛り上げてくれたゲストたち、そしてディーラーや広島のプレイヤー達の温かい雰囲気がお客さんにも伝わって人間的にすごく楽しんでもらえたからだと思っている。僕はそこを意識して正解だったと思っているし、今後もそれを1番にしていこうかなと考えています。
運営メンバーが当事者意識を持ち、そして関係者たちに対しても気持ちを作ってもらうための環境作りみたいなところが大事だったんですね。
XPTの魅力で他の大会には負けないところを教えてください。
情熱ですね。何%って推し量れるものではないけど、絶対負けない自信があります。
プレイヤーにとってポーカーイベントって1つの目標としていくじゃないですか。例えば、今「XPTで結果を残すぞ」とみんな張り切ってくれていますが、ここで燃え尽きるのではなく、XPTは懸け橋であり、次の大会に向けて闘志を燃やし続けて欲しい、ポーカーを楽しみ続けてもらいたいという思いが、非常に強くあります。
だから僕らが1番焦点を当てているのは、結果が残らなかったプレイヤーです。勝った人はどのイベントで勝っても嬉しいわけで。負けたけどめっちゃ楽しかったし、ポーカーやっぱ面白い、来てよかったと思ってもらえるところに様々な仕掛けをしたり、そういうところに、XPTの真髄が詰まってる気がしています。
XPTにはみさわさん初め、多くのゲストプレイヤーが参加されます
第1回開催後、広島のプレイヤーの熱意が変わったと感じましたか。
めちゃくちゃ感じました。1番嬉しかったのはアミューズメントで結果を出せなかったプレイヤーが、XPTが終わってからこの1年間で強くなったことです。もちろん1年間ポーカーすれば誰だって強くなるだろうと思うかもしれませんが、目標設定があるとこれだけ変わるのかと思いました。
モチベーションにしてるのがXPTだと、僕のいないところでも言ってくれていると聞くので、やってよかったなと思います。
地方で大会を行うことに関してほかに意義に感じてるところはありますか。
いくつかありますが、店舗の士気を上げることですね。
士気という言葉が合っているかわからないですが、やっぱり店舗が盛り上がって、お客さんが盛り上がると思うんです。僕は日々経営に悩んでいる中国地方を含む地方の店舗がより簡単に盛り上がってもらえるような仕組みが作れれば1番いいなと思ってXPTを始めました。
第2回は、第1回に比べて長いサテライト期間を設けました。5か月も前からサテライトを開始したのもダイレクトバイインを無しにしてシート保有者しかMAINに参加できないように設定したのもその理由です。XPTをスケジュールに組み込むことで、少しでも店舗の負担を軽減できればと考えていて、その上でお客さんにも需要を生み出していかなければなりませんのでもちろんこちら側の努力は必須です。
近い地域の店舗さんにとって助かる存在になっていければ必然的に協力しようと思っていただけますし、そうするとみんなでXPTを作るんだという意識がプレイヤーさんにも伝わり、いつの間にか中国地方のポーカーコミュニティ全体で作り上げていくイベントになる。
意義、という意味合いでいうと県外から来た人たちが暖かく迎え入れてもらえるような雰囲気に包まれ、そうする事でそこにいる皆さんが全員が気を使い合えるイベントにすることに意義を感じていています。日本人ならではの人を尊重し合えるポーカーイベントにしたいですからね。
広島以外の中国地方の盛り上がりも感じますか?
めちゃくちゃ感じますね。多くの店舗さんからXPTがあったからだと言っていただいております。
第2回に繋げていきたいこと、チャレンジしたいことがあれば教えてください。
元々XPTを未来永劫続けるつもりはなく、前回も含め「今回が最後」だと思ってやっています。仮に終わったとしたら、「終わるのもったいない」と思われるぐらいのイベントにしたい。なのでいろんな点をパワーアップさせたつもりです。
まずはサイドイベントの全体的な規模感を強化しました。そしてメインイベントもいろんな部分を変えました。大きな部分でいうと2Day制から3Day制にしました。第1回目は、終盤のアベレージが低くてプッシュorフォールドな場面がすごく目立ってしまいました。トーナメントなので仕方ないところもありますが、僕も1プレイヤーとしてなんだかなと思っていて、最終的に納得のいくポーカーをして欲しいというところに寄り添いたかったので、3Day制にしました。
また地方イベントから国内イベントと呼ばれるレベルに近づくために、オリジナルのトランプ、ボタン、マーカーを作ったり、オリジナルのアパレルブランドも立ち上げました。アパレルグッズの販売も今回会場で行います。
XPT開催後から西日本で地方イベントがたくさん立ち上がりましたが、この状況をどう捉えてますか。
心の底から嬉しいと思います。最初XPTを開催するときはネガティブな意見も多くて「挑戦」というテーマでやらせていただきましたが、僕の中では「これで地方で大型大会がやれるかどうかが分かるならいいじゃん」と思っていました。
もし失敗したらやっぱり地方はやめとけということが分かるだけ。もし反響があって成功したら、おそらく次に福岡、名古屋、仙台などで行われていくだろうなと思っていました。だから、僕と同じように地方で大会をやるかどうか悩んでいた人たちは、XPTに注目していたと思うし、第1回の結果を見てやろうと決断してくれたのかもしれない。もちろん、元々やるつもりだった人たちもいると思いますが。
ただ、XPTは間違いなく、今年、地方イベントがこれだけ開かれる先駆けになったと思っていて、そういった未来を作りたいと思って立ち上げたのですごく嬉しく思っています。
僕の中で心配だったのは失敗した時。イベントの場合は1回目に失敗すると、お客さんの印象面、コスト面、運営全体の士気などが落ちてしまうため、2回目から盛り上がることが少ないと思います。もし失敗したら地方イベント自体が小規模でしか行われなくなると思ったので、最初から全ての懸念点を払拭した上で1回目を開催しました。妥協は一切せずに開催したのが良かったなと思います。
今後、地方が盛り上がるために鍵になってくるものはなんだと思いますか。
予想するのは難しいですけど、まだ注目されていないプレイヤーから、新たなスターが育っていく必要があると思います。
広島も含めて、地方にはたくさんの強いプレイヤーがいます。僕自身が都内とかいろんな地域へ行ってポーカーする中で本当に思うことです。
国内のポーカープレイヤーにおいてはただ強いだけってもったいない。海外では強さが利益に直接反映されるけど、国内は「強いね」って言われるだけ。強いプレイヤーが目立ち、様々なチャンスを得るためにイベントをやっていますし、地方のイベントは特にそうであって欲しいと思っています。
都内のプレイヤーが有名なのは、大会がいっぱいあって話題になるスポットが多いからだと思っています。地方にも、大きなポテンシャルを持っている人がいるのに、誰も知らない。そういった部分にしっかりこっちがフォーカス当てて、有名なプレイヤーにスポットを当てることができれば、もっと面白い連鎖が増えていくかもしれないですね。
今までだったら絶対あり得なかったことを生み出していくためにも、地方のプレイヤーをもっとピックアップしていきたいなと思います。
例えば、地方からWSOPのブレスレットホルダーが誕生したら、すごく面白いことになっていきそうですね!
日本のポーカー界に対して思うことはありますか。
色んなことが進化しすぎたなと思ってます。僕は単純にトロフィーを狙ったりみんなでちょっとずつ大きな大会に挑戦していく部分にフォーカスが当たっていた時代が良かったなと正直思っています。
とはいえ、そういう未発達だった時代に戻ることはもう無理そうなのでプレイヤー自身が明確な目的を持ってポーカーをして欲しいと思っています。仲間と一緒に楽しく遊びたいだけであれば、その目的が逸れない範囲にして欲しい。自分の中でポーカーに対して何を求めていて、何をしたいのかっていう部分を明確に持っていれば、目的に合ったトーナメントに足を運べるようになると思う。
ありがたい事に都内を含めて全国には沢山ポーカーする場所が存在します。身の丈に合った、そして目的にあった場所を選んでポーカーを楽しんでいってほしいです。どうしても、参加費が高いイベントなどで結果を残しているプレイヤーが注目されて煌びやかに見えるのはわかるんですけどそれが全てではないですし、もっとポーカーを通じて楽しい事や嬉しい事はあると思います。
選択肢が増えたからこそ、どういう目的でポーカーに接するのかが重要になってきますね。
先ほどと同じ内容になりそうですが、賞味期限を自分で短くしないで欲しいですね。
ポーカーは人生でずっとできるものであるはずなのに、今の国内イベントの多さや高額な参加費も相まって色んな物を失ってしまう人もいる。ポーカーには自信があるんだけれどもさすがにこの金額的には出られない、ということに引け目を感じないで欲しい。
ポーカーに対する向き合い方を見つめ直して、目的通り楽しめる人になってほしい。それはビジネスやライフハックにも活かすことができて、結果的にポーカーからいろんなことを学んでいけるはずなんですよ。
ポーカーから教えてもらったことはなんですか。
全てな気がします。笑
1番教えてもらったのはなんでしょうね。とある複雑なスポットで難しかったり、唐突に訪れた局面に悩まされて、その正解を知る為に時間ばかりかけていた時期があるのですが、今はそういった複雑な局面に時間的コストを割かないよう意識するようになりました。それは人生においても同じなのかと。
それほど難しい局面というのはポーカーをしていて滅多にない一方で、頻繁に訪れる状況下で小さなミスをしていた場合積み重なっていったミス度合いは最終的に大きなミスに繋がってしまいます。そういった頻繁に訪れるスポットに関しては詰めて理解していく方が、長くポーカーをやるのであれば必要なことかな、と思います。
ビジネスや人生においても、全くわからないことに対して何日もかけて苦労して正解を追い求めるより、わかっている人に聞いたり、プロの方にお金を払って頼むことで、こちらのコストを極力割かないようにする。その代わり自分たちが得意としてる部分、簡単だと思うことに関しては、勉強したり話し合うことにコストを割くよう意識することで、人生が豊かになった気がしています。
最後に読者に伝えたいことやXPTの意気込みを教えてください。
地方イベントに足を運ぶのはめちゃくちゃ新鮮だと思います。食事、人との出会い、観光など、旅行とポーカーを半分ずつ楽しめて、思い出がたくさん残るのが魅力なので、どんどん行って欲しいなと思います。
また、ここで結果を残し選手契約を結べた場合、その後のイベントを取捨選択していただいて、最終的に海外のトーナメントで結果が残れば、夢みたいな金額が現金で手に入る可能性がある。僕ら地方イベントはその懸け橋になりたいと思っているので特に地方にいる方は、こういった仕組みをしっかりと利用して欲しいなと思ってます。
第2回XPTは2024年10月に広島で開催します。
今回は大型イベントと言ってもらえるように力を入れています。ぜひ3日間来てください。サイドイベントもかなり豪華になってますし、何より有名なプレイヤーさんやゲストさんが広島まで駆けつけてくれます。そんな方達とポーカーをできる機会なんて本当に中々ないので是非本気で勝負してみてください。
もし、残念ながら飛んでしまっても、会場から繁華街も近いですので仲間達と一緒にお酒を飲みに行ったりご飯を食べに行くのも良し、朝から夜中まで会場に残っても良し。とにかく広島というものを楽しみに来て欲しいです。
広島の人たち、中国地方の人たちはみなさんを必ず温かく迎え入れますので、1人でも安心して来てくれたらなと思います。
ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。
広島大型大会XPTの主催者。自身もプレイヤーとして国内や海外のポーカートーナメントを周り多くの優勝を飾る