「ポーカーとNFTゲームの共通点」コインムスメ代表 辻拓也
将棋で多くのタイトルを獲得しレジェンドとして名を馳せる、将棋棋士 十八世名人資格保持者 森内俊之さん。
将棋のトッププロでありながら、ポーカーでも好成績を残している森内さんの、それぞれのゲームへの向き合い方に迫ります。ポーカーメディアPOKER PICKSがお届けします。
ポーカーを始めたきっかけは何でしたか?
子供の頃から簡単なポーカーのルールを知ってはいました。
対人でやるようになったのは、知人がポーカーのアミューズメント店を開店する時に誘われまして。そこで改めてルールを教わったというのが始めたきっかけですね。
それからポーカーをされる頻度はいかがでしたか?
お付き合いでやるような感じで。 ただ、そこで色々と大会に誘っていただいたりしたので、そういうのも1つのモチベーションにしてやっていたような感じですね。
ポーカーはどのように勉強されましたか?
人のプレイを見て覚える。あとは、本が好きなので、ポーカーの本が売ってたら簡単に目を通すことなどをしています。
結局いまだに、よくわからずにやってるところが多くて(笑)
そうおっしゃっても、名人戦本選でヘッズアップに残ったり、ハイローラーイベントで優勝したり、立派な成績を残されていますよね。
短時間のトーナメントで運の要素が強かったと思いますが、優勝できたのは光栄なことでした。
将棋とポーカーの共通点ってどのようなところだと思いますか?
勝負の付け方みたいなところは似てると思います。 ミスをすればその分、自分の期待値みたいなものが下がりますし。
もちろん全然違うゲームではあるんですけど、やっぱり自分を高め続けなくてはいけないですし、そんなところに共通点はあるなという風に感じます。
では反対に、将棋とポーカーの相違点はどのようなところだと思いますか?
将棋は完全情報ゲームで、答えがある場面が多いので、そこを突き詰めていくっていう感じになります。正しい手を指し続ければ負けることはないですし、それが結果に直結します。
一方で、 ポーカーの場合は、相手の手札がわからないですし、統計的に見ると正しいプレイってあると思うんですけども、その場においては、その「良いプレイ」が直接勝ちに繋がるとは限らないです。
確率的に正しかったから負けてもいいっていうのは、なんか違う気がするんで。その確率のところと、現場でどうするべきかというところをすり合わせないといけないので、そこは難しいなと。そういうところが大きな違いかなという風に思いながらやっています。
なるほど。他にはありますか?
そうですね。将棋の場合、1対1でやるんで、自分のミスがそのまま負けに直結しますし、 相手が間違えてくれて勝ちを拾うこともあるんです。ポーカーの方は、もちろん1対1になる場面もあるんですけど、より多くの人数でやるので、展開が読みにくいというか。
なかなか計算しきれないところがあるので、そういったところはポーカーの深いところなのかなという風に思ってますね。
森内さんは、ポーカーをする際に相手のプレイヤーの仕草とかテンション、表情をよく見ている印象があります。やはりそこは意識されているんでしょうか?
そうですね。特殊な訓練をしてない人の間でやる分には、仕草とかに自分の強さとか、そういうのが出てしまうことが多いですし、やはり傾向みたいなものもありますので、よく見るようにしています。
せっかく大会に出てこられて活躍したいと思ってるのに、適正よりも少なくプレイする人ってあんまりいないと思うんですよ。どうしても皆さん自信があるし、多くプレイしたいという気持ちが強いだとかで、ゲーム的に正しいプレイとは違うプレイを意図的にされる方が多いという風に思うので、どの人がどういうプレイをしてるのかってことを見ながら進めるようにしてます。だから、大会の序盤では参加しようという意識がそれほど高くなくて、どんな人がやってるのかなっていうのを見ておく感じの進め方になってますかね。
将棋と違って正しい手が決まっていないポーカーだからこそ、そういった傾向を蓄積することにメリットがあると思ってます。
例えばチェックレイズみたいに相手を罠にかけるようなポーカーの技は、レベルの違いはあれど将棋の世界にもあると思います。そういう罠にかける時の狙いなど似ている部分はありますか?
そうですね。そういうのもあるかもしれません。罠を用意して、そこに誘い込もうするということは、自分が罠にかかる危険性っていうのも当然伴っていますので。そこらへんは、兼ね合いというか。
自分だけ罠を用意して、自分は罠にかからないとか、そういうことはないので。良いことがあれば悪いこともある。
将棋の世界でも、チェックレイズにリレイズオールインみたいな、罠を利用する罠を作る技もあったりしますか?
もちろんありますね。 自分は基本的に将棋はプロとしかやらないので、一方的にこちらがうまくいくってことはないです。
自分がうまくいってるっていうことは相手もうまくいってるっていうことの裏返しにもなりますので。この計画通りに行ってる時が1番危ない時だったりします。相手にそう思わされているだけかもしれませんので。
ポーカーをするときも常にそういうことを念頭においています。
ポーカーのトーナメントの場合は、時間によってチップの価値がどんどん変わっていきます。でも、将棋はそういうことはないので、最初から最後までの時間はずっと一定の価値になるんですか?
最後の方が価値は重いです。例えばお互い待ち時間が沢山あったとしても、最後は本当に1手1分で指さないとといけなくなったりとかいう場合もありますし、終盤はミスをすることで勝敗が入れ替わることも多くて、ミスの重みが変わってくるので、最後の方が大事なんですよ。
なるほど。集中力をキープするコツはありますか?
いや、ないですね(笑) 休みながらやるくらいですかね。
あんまりずっと根詰めてやると疲れてしまうんで、最後の方で力を発揮できるようにとは思ってますけど、なかなか難しいです。
若い時は常に集中し続けられるので、そういう意味では若い人にはアドバンテージがあるのかなと思います。
将棋の世界で大切にされている心構えみたいなことはありますか?
将棋は、1人ではできません。
対戦相手がいて、お互いの呼吸が合ってこそ、良い将棋が生まれます。 対戦相手への敬意を忘れずに、作品を作り出していく仲間といった気持ちを持ちながら進めていくことが多いです。
独りよがりな将棋にならないようにとは思ってます。
素敵な文化ですね。
ポーカーをしていて思い出深いシーンやハンドはありますか?
自分の参加してるハンドではないんですけど、名人戦本戦で残り3人になって、 3人とも拮抗したチップ量になってですね。この後どうしたらいいんだろうと思って。そこでチップ増やした方がいいのか、あるいは決勝に残るのがいいのか。判断がつかなくてですね、考えながらやってたんですけども。
その時にたまたまその自分以外の2人がぶつかりまして。トーナメントの終盤なのでチップの量もそれほど多くなくて、フロップでオールインまで行ってしまったんですけども。 オールインした人がAQハイで、オールインコールした人がA7スーテッドのナッツフラッシュドローだったんです。 AQハイの人がフロップでチェックレイズオールインしているのを見て、圧倒的に負けている状況もありえる中で、凄い度胸と読みだと感動した記憶があります。
引用:名人戦公式YouTube
ひゃっほうさんと堀さんですね。
そうですね。トーナメント終盤で、成績に直結するところだったので、普通だったら長考してしまいそうなところで。決めてたんでしょうけど、そのプランニングがすごいなって。
出場予定のポーカー大会はありますか?
今まで誘われて出ることがほとんどで。海外の大会も行ったことがないですし。
行ってみたいとかは思われますか?
きっかけがあればいいのかなと思います。あんまり詳しくなくて、これに出たいとかそういうのはないんですけど。ただ、最近は動画とかで海外の大会の様子を出してるポーカープレイヤーの方もいらっしゃるので、そういうのを見ていると面白そうだなって思ったりはします。
今後の目標についてお聞かせ願います。
まずは将棋から。もう長い間プロ生活をさせていただいて、タイトルも獲得させていただいたんですけど、ここ10年ほどの、AIの発展などによる技術革新が起きたあとは、あまり自分自身の中では大きな結果を出せていなくて。
もちろん年齢的な面で難しいところもあるんですけども。若くて優秀な棋士がたくさん出てきて、将棋の世界がどんどん変革とレベルアップを続けていますので。
1回、そうですね、檜舞台で戦ってみたいとは思いますし、そのために精進を続けていかなくちゃいけないなという風に思いますね。
今後ますますのご活躍をお祈り申し上げます。 ポーカーでは何か目標などありますでしょうか?
ポーカーの目標は考えたことがないんですけども(笑) 大会に出場した経験も少なくて。そういった中で、お誘いいただいて、何度か日本の中で権威ある大会に出場させていただいて、良い経験になりました。
ただ、日本の中だけですとどうしても制限がありますので、チャンスがあれば海外の大会のチャレンジできるかな、どうなのかなという感じです(笑)
ありがとうございます。WSOPに挑戦する森内さんの姿もいつか拝見したいです!!
ポーカーピックスの編集部「ポーカーのすべてをあなたに」をコンセプトにポーカーのオリジナルコンテンツを執筆。現役プロプレイヤーやディーラーなど幅広い視点でポーカーの魅力を発信する。
将棋棋士 十八世名人資格保持者。将棋で多くのタイトルを獲得しレジェンドとして名を馳せる